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2012年、世界の注目を集めるアジアの動き(後)
未来トレンド分析シリーズ
2012年1月12日 07:00
外務大臣政務官 浜田 和幸

 中国はアフガニスタンに限らず、中央アジア全体に対しても資源開発面での協力と合弁事業の推進に力を注ぎ始めた。たとえば、トルクメニスタンは世界最大の天然ガスの宝庫と見なされているが、中国は同国に対する投資を急速に加速させている。また、レアアースを含む地下資源の保有国として注目を集めているカザフスタンに対してもパイプラインや輸送手段の改善、強化に向けて熱心な支援を続けている。要は、かつてシルクロードで栄えた中国とヨーロッパの貿易ルートにあたる中央アジア諸国との関係強化が中国の新たな資源外交のターゲットに位置付けられるようになったのである。

中国.jpg 中国は近年、急速な経済成長を遂げ、「世界の工場」とまで呼ばれるほどの発展を見せてきた。しかしヨーロッパの金融危機が引き金となり、中国の輸出戦略にも陰りが見え始めた。中国商務省の見通しによれば、「2012年は中国の輸出産業にとって厳しい局面になりそうだ」とのこと。海外からの中国への直接投資も対前年比で大幅な減少が予想されている。

 中国が「いわゆるバブル経済の崩壊に直面するのではないか」といった厳しい見方も出始めている。地域間や貧富の格差の拡大が社会不安をもたらし、「アラブの春」の影響がいつ何時、「北京の春」という形で火を噴くかもしれない。すでに各地で労働者のデモや農民たちの反政府行動がかつてない勢いで頻発するようになってきた。

 2012年秋には現在の胡錦濤体制から習近平体制への移行が行われる。国内の政治、経済情勢を安定させるためにも、海外からのエネルギー資源の供給が欠かせない。そのために中国は軍事力、特に海軍力の増強に熱心に取り組んでいるに違いないのである。そして、そうした動きに最も敏感に反応しているのがインドである。自らの前庭のようなセーシェルに海軍基地を建設されることになり、インドとすれば中国との関係に神経質にならざるを得ない。

 まさにインド洋の波高しだ。「遠海防衛」を打ち出し、空母の就航や南シナ海に次ぐ中国の海洋進出はアジア諸国をはじめアメリカからも反発を呼びかねない。万が一、インド洋での衝突が起これば、わが国の原油供給ルートにも影響が及ぶのは避けらない。

 わが国は今年、中国との間には外交関係樹立40周年、インドとの間には同じく60周年という節目の年を迎える。ヨーロッパやアメリカの経済が減速どころか危機的状況に直面している状況に鑑みれば、中国やインドといった巨大な新興国との経済関係への強化は日本にとっても、死活的な課題とならざるを得ない。

 それゆえ地域全体の安定と繁栄のために、より平和的な手段を講じる役割としての日本の存在理由は高まるはずだ。わが国は「中央アジア・プラス・日本」という枠組みで、資源争奪戦の最も熱い地域との政治、経済対話を推進、強化している最中だからである。

 日本は中央アジア諸国の地域間協力を促進するため、2004年から政治、経済、文化、人的交流の枠組みを構築してきた。特に力点を置いているのが「中央アジア・グリーン成長構想」と銘打つ環境支援プロジェクトで、再生可能エネルギーの開発、普及を目指したもの。また、地域間や各国内の格差是正を実現するため、保険、医療、教育といった分野でも日本が橋渡し役を務め、高級実務者会合や外相協議を重ねており、中央アジアの国々からは高い評価と信頼を得ている。

 日本国内ではあまり知られていないようだが、これらの国々は中国やインド、ロシアといった近隣の大国との関係をどのように取り結んでいくかについて日本の知恵や協力を求めている。本年秋には、東京でそうした会合が開催される予定である。アフガニスタンからは電力や輸送インフラの整備について、またキルギスやカザフスタンからは「投資セミナー」の開催や「ビジネス評議会」の設置など、具体的な提案が相次いでいる。いよいよ日本の持つ代替エネルギー開発や省エネ、防災、減災の技術を活かした独自の技術外交や人材育成プロジェクトの出番であろう。

(了)

≪ (中) | 

<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務政務官に就任。震災復興に尽力している。


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