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玄海原発を考える(3)~二つの輪を持つ加圧水型原子炉
特別取材
2012年2月 6日 16:00

 玄海原発は加圧水型軽水炉である。福島第一原発とは異なる形式だ。福島第一原発は沸騰水型軽水炉。言葉には意味があるから、そこからひも解いていくことにしよう。

genkai.jpg まず、○○型○○炉の前半部分、型の方から説明する。沸騰水型は沸騰させた水から出る蒸気で直接タービンを回して発電を行う。したがって1つの輪の中を水が液体から気体、そして液体に戻るという循環をすることで完結している。
 一方、玄海原発が採用している加圧水型は2つの輪で発電する。原子炉で熱せられた水が循環する一次冷却系と、その熱せられた水から熱だけを取り出して水蒸気を発生させてタービンを回し発電する二次冷却系だ。言うなれば、二つの輪を知恵の輪のように交差させて熱のやり取りをしている。原発の問題の最たるものは放射線が漏れ出て周囲を汚染してしまうことにある。それが一次冷却系の中で完結させられるのなら、沸騰水型よりもずっと安心できるシステムに思える。

 ただ、往々にして現実と理想は乖離してしまうもの。原子力発電もその例に漏れるものではない。ふたつの輪と書いたが、実際は非常に複雑に大小さまざまなパイプが交錯する施設なのだ。複雑化すればするほど、問題も複雑化する。実際、玄海原発では細い管が何度も何度も破断してしまう事故が発生している。シンプルな方がいいか、複雑な方がいいか。つまるところ「分からない」というのが正しい答えのようだ。
 加えて、沸騰水が単純に口のつながったやかんの構造をしているのに比べて、加圧水は「加圧」している水が循環している、圧力なべのような構造をしている点も違いがある。二個の輪で熱をやり取りするのだから、後の方のタービンを回す輪の水を沸騰させて水蒸気を得るためには、最初の輪は非常に高い温度の熱媒体が必要になる。富士山の山頂は気圧が低いために90度ほどで湯が沸く。

 ならば気圧を高くすれば高い温度でも水は沸騰しないことが分かる(ボイルシャルルの法則)。加圧水型原子炉では一次冷却系で非常に高い(160気圧ほど)圧力を維持することで、中にある水を300度程度の液体の状態で循環させている。160気圧、水深1,600mほどでかかる圧力だ。この圧の強さは深海探査艇の精緻に組み上げられた耐圧構造を思い浮かべたら想像できると思う。ちなみに二次冷却系では55気圧ほど、沸騰水型では70気圧ほどの圧力がかけられている。輪を2個にすることで放射線の拡散を防ぐ工夫はすばらしい。

 だがその一方で、構造が複雑になること、高温高圧の状態で炉を維持することによるリスクの増加も持ち合わせている。リスクが分かっているのならば、丈夫な素材で炉をつくり、丈夫な構造にすれば問題ないではないか!と言う方もいるかも知れない。まったくその通りだが、ノーリスク、または非常に低いリスクにまで持っていくだけの技術が今の「世界」には存在していないのである。
 どちらが安全かは、正直言うと分からないし、その差がどの程度のものなのかも、松ぼっくりとピンポン玉くらいの差なのか、どんぐりと地球くらいの差なのかすら分からない。

(つづく)
【柳 茂嘉】

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