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玄海原発を考える(5)~リスクの考え方
特別取材
2012年2月 8日 16:00

 電力会社はリスクとメリット、ベネフィットを天秤にかけて、原発を動かしているのである。リスクというと事故、とくに重大な事故の発生確率がどれくらい、という難しい確率論の話が飛び交うが、これには一言物申しておきたい。

 原発リスクを考えるとき、確率を用いること自体がナンセンスなのではないかと考えてしまうのだ。たとえば福島の事故が発生する確率は、事前の計算だと限りなくゼロに近かった。福島に「輸入」されたマークⅠ型原発の重大事故発生確率は、1975年にアメリカで発表されたラスムッセン報告によると50億分の1だ。これは飛行機事故の確率10万分の1と比べたらわかるように、非常に低い、ほとんどありえない確率と言える。でも実際に事故は起こった。何十億分の1でも1回起これば100%である。起こるか起こらないかは0か1かのデジタルのはずだ。それをアナログで細かく細分化してお偉い先生方が何%と言ったところで、起こる時は起こる。起きるか起きないか。加えて言うなら事故が発生する余地があるかないか。あれば「危険」と言わざるを得ない。

sora_4.jpg 飛行機に乗っても事故に遭うことはある。道路を歩いていても車に轢(ひ)かれてしまうこともある。火事で家が燃えてしまうこともあるだろう。リスクはどこにでもある。したがって、原子力にリスクがあっても他と同じだ!確率は圧倒的に低いのだから、他よりも安全と言えるだろう!と言うのは違うように感じる。

 たとえば、原子力の事故よりも頻繁に起こる交通事故を例に見よう。車で人を轢いてしまった場合、轢いた側は事故で発生した相手方の不利益を賠償する責任を負うことになる。そのために強制保険の自賠責に加えて任意の保険に加入している。万一のことは起こさない努力をしつつも、有事の際には完全に自己完結で責任を負える仕組みができあがっているから、安心して歩行者も道を歩けるし、車も運転ができるのである。飛行機もしかり。けれども、原発はここの考え方が違う。

 まず、重大事故が発生した場合は、周辺地域が壊滅的なダメージを負う。汚染された土地も発生する。健康被害も出るだろう。命を落とす方もいらっしゃるやも知れない。周辺地域以外でも、イメージダウンは避けられない。企業によっては存亡にかかわるところも出てくるだろう。その賠償たるや、数兆円、数十兆円かけても十分ではないと言われる。それをまかなう仕組みがない。換言するならば、酔っ払って大型車を運転してビルに突っ込む事故を起こしても、誰も保障してくれない、ドライバー個人では賠償しきれない、そんな状況と変わりはない。

(つづく)
【柳 茂嘉】

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