ソ連のゴルバチョフ大統領が「日本は世界で一番成功した社会主義国だ」と発言してから久しい。もちろん、当時は、彼一流の政治家としてのリップサービスであった。しかし、表向きは資本主義国家のはずの日本だが、最近の新聞紙面には、社会主義国家と間違えてしまいそうな政策が毎日のように踊っている。
政府は、「分厚い中間層」の柱の1つとして、2012年には「若者雇用戦略」の推進に向け、大学新卒者の就職支援強化のために95億円を計上した。
近年は就職が決まらないまま大学を卒業する若者が1割近くおり、無職や非正社員になりがちだ。その改善のために、新卒応援ハローワークを拠点に就職支援をするジョブサポーターを約300人増員し、3,000人配置する。「大学生現役就職促進プロジェクト」(20億円)では、大学と連携し、就職未内定者に対して在学中からハローワークに全員登録することで集中的に支援する。
1990年代前半から2000年代前半に卒業した就職氷河期世代では年長フリーター化が進んでいるため、この世代を対象とする「若者ハローワーク」を新たに東京、大阪、名古屋に設け、生活相談と就職支援を行なう。
この総計95億円(国民の血税)はまったく無駄である。筆者は、仕事の関係で、何カ所かのハローワークを訪問、担当者と話した経験があるからすぐにわかる。しかし、読者の皆さんが、ハローワークに一度でも、足を運んで頂ければすぐ筆者と同じ意見になると確信する。それは、社会人として生きていく、少なくとも、資本主義の原理、原則を無視しているからだ。
民間企業であれば、偏差値40以下で、勉学心、向上心に欠ける人間は雇わない。新卒時に、50社落ちた人間を、就活能力を高めたり、にわか業界研究をしたとしても採用する企業はない。このシナリオを描いた人間に問いたい。あなたは、自分の足でハローワークに出向き、相談員と真面目に議論をしたことがあるのか。自分が経営者であった場合、自分の会社にレベルの低い人間を採用するのか。これは、全人格の問題とは別次元の問題だ。このような、"絵に描いた餅"のような政策が平気で書かれ、それをまったく批判なく、垂れ流しのように報道してしまう大新聞はいかがなものか。
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<プロフィール>
富士山 太郎 (ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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