政府は、「分厚い中間層」の柱の1つとして、2012年には「若者雇用戦略」の推進に向け、大学新卒者の就職支援強化のために95億円を計上した。筆者は前回、これはまったくの無駄であるとして、ハローワークにおける相談員の限界を挙げた。
企業は、常に自分の会社の生死がかかっている。本来ジョブサポーターとは、企業側のニーズと人材の特徴・能力をマッチングさせるのが仕事である。ただし"レベル"というキーワードを抜きにしてこの仕事は成立しない。単なる、お茶飲み相談相手やカウンセリングとは、仕事の種類が本質的に異なるのだ。最終的に、"成約"できなければすべて"零点"と同じ、厳しいものだ。
民間企業の経営者を舐めてもらっては困る。彼らは、何時いかなる時でも、優秀人材を渇望している。すごく真剣だ。優秀(もちろん偏差値だけでは決してない)な人材は見逃さない。そこで、一度ふるいにかけられた人材を雇う企業はないのだ。
筆者は以前にも詳しく述べたことがあるが、就職が決まらない学生、既卒者に必要なのは、1にも2にも"実力"(学力だけではない)をつけることである。つまらないマッチングを何度繰り返しても結果はまったく変わらない。問題の根本原因がそこにないからだ。
高度な実力・学力をつけなければ意味がない。さらに言えば、自立心があって、学力にこだわらなければ、様々な職業があり、君たちの同期の若者は立派に皆活躍している。
それは、ハローワークで実施される、いわばセーフティネットに近い(お金まで支給される)職業訓練と称した学習では断じてない。この種の学習は、何時間やっても、正規雇用には、直接的には結びつかない。目的が、「無料で講習が受けられる」だったり、「講習に出席するとお金がもらえる」という傾向が強いからだ。
今回の政策の一環として、ジョブサポーターを約300人増員することが決まっている。さらに「大学生現役就職促進プロジェクト」(20億円)がある。恐ろしいことに、大学と連携して、就職未内定者は、全員ハローワーク登録を促進させるという。あきれるばかりだ。大学のキャリアセンターの実態のお粗末さは昨今よく話題になっている。日本の大学は、世のなかの社会的組織のなかで、ハローワーク(官公庁)と並び、最もこの種の厳しさに欠けるところだ。その両者が連携してどうするのだ。次回はそのハローワークの実態に迫ろう。
<プロフィール>
富士山 太郎 (ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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