ハローワークの相談員、ジョブサポーターは、数少ない役所の正規職員を除けば、ほとんどは60歳以上のリタイア組である。多くは、企業の人事部在籍など何らかの人事に関する経験はあるが、キャリアコンサルタントとしての実務経験はなく素人である。
「キャリアコンサルタント」の資格は試験と面接だけで、10年以上は必要であるはずのコンサルタントとしての実務経験は問わない。したがって、多くは定年後、第二の人生の生きる道として試験だけを受けてキャリアコンサルタントになる例が多い。これには、資金が50万程度必要であるが、真面目に学校に行けば落ちることが不思議なぐらいのレベルである。
ジョブサポーターを採用する場合、役所はコンサルタント能力を審査できる能力も、経験もない。このワケのわからない資格だけが頼りだ。
筆者の知る限り、本当に力があって、キャリアコンサルタントで活躍していた人間で、資格を持っている人間は皆無に近い。この仕事は、結果"成約"がすべてだ。60歳過ぎたからと言って、今さら資格をとる人間もほとんどいない。
現在キャリアコンサルタントの資格を持っているのは、上記のリタイア組と 学校を卒業して2年、3年の、人材紹介、派遣会社のコンサルタントとは名ばかりの営業部員だ。冗談ではなく、業界では持っていないことが、実力の証と思われている。別に、資格に頼らなくても、十分に仕事ができるからだ。
おそらく、今回増員を見込まれる300人のジョブサポーターの大半は、素人で資格だけのあるにわかキャリアコンサルタントである。現状では、成果はまったく問われないからだ。しかし、キャリアコンサルタントの成果は、"企業との成約"だけであって、それ以上でも、それ以下でもない。とくに、今回の目的から言えば、相談相手になれても意味はまったくない。こんなお気楽なコンサルタント稼業はない。国民の税金を使っているのだ。もっと、ずっと、緊張感のある仕事でなくてはならない。各役所は企業との成約率を公表するべきだ。それが、血税を使う国民への礼儀である。
最後に、これはブラックユーモアに近く恐縮であるが、ジョブサポーター300人大幅増員することは、新卒支援にはまったく役に立たないが、中高年再就職支援には役に立っている。
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<プロフィール>
富士山 太郎 (ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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