福岡酒類販売(株)の内紛が発覚したのは2009年10月。物流など相応のコストがかかるなかで「売上は立っても利益を出すのは難しい」といわれる業界にあっては表面化から破綻まで2年余りという急激な転落劇だった。近年の同社の売上総利益率は6%台で推移。「コンマ数パーセントのロスが収益に影響する」というシビアな業界だ。今回の破綻により小売店を対象とする地場問屋はほとんど消滅。大手総合食品問屋の領域になりつつある。
一方、業務用卸は小売店向けより粗利率が高いとされるが、それでも「15%を確保するのは困難」な状況だ。業界には複数の有力地場業者が現存し、なかには売上げを伸ばしている企業もある。しかし、販路の飲食店業界は道交法の改正や震災による消費マインドの低下や若年層のアルコール離れなどに晒されている。こうしたなか経営不振に陥った飲食店との付き合い方も慎重にならざるを得ない。安易な撤退は、相手を一気追いつめ破綻させる可能性もあり、不良債権発生のリスクにつながる。とはいえ、なし崩し的な取引継続は未収金拡大のリスクをはらんでいる。
それぞれ各種イベントや酒蔵の開拓など地道な活動を行なっているが、酒類卸業界を取り巻く環境は厳しさをましている。
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