米投資会社リップルウッド・ホールディングス(HD)傘下のRHJインターナショナル(本社:ベルキー、以下「RHJI」)は、宮崎市の高層ホテルやゴルフ場を擁する大型リゾート施設「シーガイア」を運営するフェニックスリゾート(宮崎市、河本和彦社長、以下「フェニックス」)の全株式を、ゲームやパチンコ・パチスロ大手のセガサミーホールディングス(里見治会長兼社長、以下「セガサミー」)へ3月末に売却する。これで日本からの撤退は終了した"ハゲタカファンド"の元祖であるリップルウッドグループだが、その日本に残した功罪を検証する。
<リーマン・ショック後、日本企業を売却>
経営権を握った、日本企業の持ち株会社であるRHJIは、リーマン・ショックを機に保有株式の売却を進めてきた。リップルウッドHDは日本以外の国への投資を行なっている。2009年に高級音響機器メーカーのディーアンドエムホールディングスをベインキャピタルに、10年にはコロムビアミュージックエンタテインメント(旧・日本コロンビア)をフェイスに、今年2月には自動車部品の旭テックをユニゾン・キャピタルに相次いで売却した。
フェニックスは1988年に宮崎県や宮崎市が出資する第3セクター方式で設立された。バブル崩壊で、2001年2月に負債総額3,261億円を抱え会社更生法を申請。同年、リップルウッドHDが162億円で買収し、再建を進めてきた。11年3月期の売上高は96億9,200万円で、最終損益は2億4,700万円の赤字。
フェニックス株式のセガサミーへの売却額は4億円。差し引き158億円の売却損だ。これとは別に、セガサミーはフェニックスに54億円を融資して、RHJIはフェニックスから8億7,800万円の返済を受ける。短期売買目的のハゲタカファンドには、再生という根気がいる仕事は向いていなかった。「今後は金融サービスに業態転換をはかる」とコメントしているが、要するに、短時間で利益を稼げるマネーゲームに切り替えるというわけだ。
<長銀買収で5,400億円の荒稼ぎ>
リップルウッドは元祖ハゲタカファンドである。同社を一躍有名にしたのは1998年に経営破綻した日本長期信用銀行(現・新生銀行)の受け皿に選定されたことだ。8兆円の公的資金が投入された長銀をわずか10億円で買収し、欧米の投資家から集めた1,200億円を出資。長銀から衣替えした新生銀行は2004年2月に東京証券取引所に上場した。
リップルウッドが組成したファンドは保有株の売却で約2,500億円もの資金を得た。さらに05年1月、追加売却で約2,900億円。2度の株式売却でリップルウッド側は、約5,400億円の巨額を手にした。ファンドの出資者は、投資した1,210億円の4.5倍以上の荒稼ぎをしたことになる。エクジット(投資回収)戦略で、最も成功したケースといわれている。
その勢いに乗り、リップルウッドは04年7月には、2,600億円で買収した固定電話の日本テレコム(現・ソフトバンクテレコム)を、3,400億円でソフトバンクに売却した。日本テレコムはもともと旧国鉄グループの通信会社。英ボーダーフォンが買収して携帯電話は継続保有。固定電話を分社化した(新)日本テレコンを03月11月にリップルウッドが買収。その8カ月後に、通信事業進出をうかがっていた孫正義氏が率いるソフトバンクに売却して800億円の売却益を手にした。
リップルウッドのティモシー・コリンズCEO(最高経営責任者)は、ハゲタカファンドと呼ばれるのを嫌い、「産業再編を加速させる企業を買収している」と主張していたが、日本テレコンは確かに再編の起爆剤になった。ソフトバンクは06年、英ボーターフォンから日本法人の携帯電話会社を1兆7,500億円で買収。これがソフトバンクモバイルである。
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