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未来トレンド分析シリーズ

未来産業国家・日本の武器は再生可能エネルギー戦略(4)
未来トレンド分析シリーズ
2012年2月29日 07:00
国際政治経済学者 浜田和幸

tikyugi.jpg アブダビ滞在中にはスウェーデンの元エネルギー長官で、現在は自然エネルギー財団の理事長を務めるコーベリエル氏と刺激的な意見交換を行なった。スウェーデンは消費者の選択肢を尊重するという風土や経済的メカニズムが存在しており、エネルギーのベストミックスを見直す作業に入った日本にとって参考にすべき意見を聞くことができた。

 同元長官曰く「自分はエネルギー技術を提供するエンジニアリング会社に勤務していたことがあり、その経験から言えば、30年ほど前まではエンジニアリング会社は電力会社と手を組み、新たな技術開発を阻止してきた。しかし、1990年代に入ると、将来のビジネスは新たな技術に基づくことになるとの認識がエンジニアリング会社の側に広がりはじめ、電力会社側との間で経営戦略やビジネスモデルの上で対立が生じるようになった。その結果、競争と効率化を最優先する電力セクターの改革が進んだのである。こうした動きは日本では見られない」。

 要は、日本においては自動車産業のように長年、国際競争にさらされてきた分野では成功を収めてきたが、競争にさらされず国際市場から隔離されている分野では悪しき慣行が横行している、というわけだ。

 コーベリエル氏からは「日本では食料市場は閉鎖性が残り、電力セクターについては地域ごとに電力会社による寡占状態が続いている。競争もなければ、効率を改善しようとする動きも見られない」と、厳しい問題提起がなされた。
 言われるまでもなく、日本では電力の供給サイドは発電コストを気にせず、世界的に見て極めて高い電力料金を消費者に押し付けている、といっても過言ではない。そうした背景には電力会社が発電部門と送電部門を独占的に管理下に置いていることや、電力市場における種々の規制の存在がある。

 調べてみると、確かにスウェーデンの電力料金は日本よりかなり安い。世界的に関心が高まり普及が進む「再生可能エネルギー」にしても、この数年で技術の進歩には目覚ましいものがある。太陽電池の価格も大幅に下がっている。ところが、日本で生産されている太陽電池の価格は世界一高いまま。これでは勝負にならないだろう。今回訪問したマスダール・シティで導入されている太陽光パネルもすべて中国製であった。

 実は、すでに中国政府は「再生可能エネルギー分野で主導的な役割を果たす」との国家戦略を策定している。こうした大方針の下、中国では風力発電企業も多数存在し技術開発に凌ぎを削っており、電気自動車の開発や普及も日本を抜く勢いである。再生可能エネルギーに関する公共政策の先頭を走るのはスウェーデンはじめ欧州諸国であるが、実際の技術開発や製品供給となると、中国が日本を凌駕し、世界の主要プレーヤーになりつつある。
 今こそ日本は再生可能エネルギー国家を目指す決断を下し、発電燃料源としての再生可能エネルギーの導入目標を高く掲げる時である。スウェーデンでは2006年に37%であった比率を2012年までに49%に引き上げる国家目標を設定した。すでに2011年に47%まで達成したという。

 残念ながら、わが国の場合はわずか数%の現状に甘んじている。もともと太陽光発電に関する技術は日本が世界の最前線を走っていたもの。音力発電、超伝導もしかり。
 折しも2月10日には「復興庁」が旗揚げした。東北地方を再生可能エネルギー重視型のスマートコミュニティのモデルとする復興計画もある。この際、「海洋国家・日本」に相応しいメタンハイドレードなどの資源開発も加速させ、日本の誇る自然エネルギーや省エネ技術を武器に、世界ナンバーワンを目指す未来産業振興策を練り上げ、「夢のある国家再興」へのスタート元年にすべきだ。

(了)

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。


 
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