<主役はゴールドマン・サックスのバンカーたち>
リップルウッドを率いてきたのは、元バンカーであるティモシー・コリンズ氏(55)と米投資銀行ゴールドマン・サックスにいたクリストファ・フラワーズ氏(54)だ。2人は長銀を買収後、新生銀行の社外取締役に就任。コリンズ氏は2007年に社外取締役を辞任したが、フラワーズ氏は筆頭株主として人事権を握り、新生銀行に君臨している。新生銀行は"フラワーズバンク"と揶揄されるほどだ。
10年3月期に巨額赤字を計上した新生銀行に対し、亀井静香金融相(当時)が、「(日本人)社長は900万円なのに、外資(出身の役員)が1億5,000万円ぐらいのべらぼうな報酬を取っている」と噛みついた。4人の外国人役員は、いずれもフラワーズ氏のお仲間で、彼らにとって新生銀行は、いくらでも搾り取れる植民地であった。
フラワーズ氏の後ろ盾が、元ゴールドマン・サックス・グループ共同会長を務めたジョン・コーザイン氏(65)である。75年にゴールドマン・サックスに入社した彼は、債券トレーダーとして頭角を現し、1994年に47歳の若さでゴールドマンの会長兼CEOに就任。異例なスピード出世といわれた。
コーザイン氏が不良債権ビジネスの処女地として目をつけたのが日本だった。コーザイン氏に請われ94年、大和證券の米国法人からゴールドマンに転職した山崎養世氏(のちゴールドマン・サックス投信社長)は、雑誌のインタビューで、「日本の会社の社長より、コーザインのほうが日本のことを知っていた。これはショックでした。その時に、もう負けたと思いました」と語っている。
不良債権買い取りを主導したコーザイン氏による日本買いの総仕上げが、ゴールドマンの組織ぐるみと評された長銀の買収だった。コーザイン氏がCEO時代に、パートナーを務めたフラワーズ氏はゴールドマンを辞め、投資会社JCフラワーズを設立、長銀買収に勝負を賭けたのである。
コーザイン氏はゴールドマンを辞めた後、政界(ニュージャージー州の上院議員を経て州知事へ)に転じていたが、金融界に復帰。2010年3月、コーザイン氏とフラワーズ氏の師弟コンビが手を組む。彼は証券会社MFグローバル・ホールディングスの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。同時に、JCフラワーズのパートナーにも就任し、JCフラワーズはMFグローバルに出資した。
コーザイン氏はMFグローバルのミニ・ゴールドマン化を目指したが、昨年(11年)10月31日、米連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請。欧州ソブリン債(=国債のこと)への投資が裏目に出たのが原因で、負債総額は397億ドル(約3兆4,000億円)。JCフラワーズはMFグローバルの出資で37億円の損失を出したと報じられている。因果は巡るである。
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