約1年前、「ベスト電器は生き残れるか?」と題したレポートを、このNET-IBと経済情報誌『I・B』で発表したことがある。内容としては、一通の「ビックカメラとの提携を解消か?」と題された匿名投書を皮切りに、決算書の検証、パソコンスクール会社との裁判、店舗の現場取材などからベスト電器の現状と課題について、検証したものだ。
2010年1月、ベスト電器は過去最悪の決算予想を発表すると同時に、大幅な事業構造改革案をリリースした。有薗憲一会長と濱田孝社長が引責辞任し、深澤政和氏と井澤信親氏が、それぞれ代表取締役社長、代表取締役専務に就任した。これを受けて、筆者はすぐに「敗戦したベスト電器」というテーマのレポートを発表した。なぜ、かつて日本一と言われたベスト電器がこのような事態に陥ったのか。
もちろん、ヤマダ、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、エディオン、コジマなど群雄割拠の家電量販業界にあって、売上高を維持していくのは容易なことではない。とはいえ、業界全体を俯瞰するとベスト電器が1人負けしている。この謎がなかなか解けなかった。
2010年の記事執筆の際、20人近くの消費者(主に経営者)にも話を聞いた。皆、一様に口を揃えて「商品価格が高い」「店員の対応が悪い」「購買意欲がわかない」と答えた。このときは、仕入方法がヤマダなどとは違うため価格を下げにくい、ポイントの率が悪い、店員の教育制度が確立していない、品揃えが他店に比べて見劣りする、といった表面的な事象が持つ意味をまさに表面的にしか捉えられていなかった。
その後3月、今度は"お家騒動"が噴出。たった2カ月という短期間で深澤・井澤両代表取締役が辞任に追い込まれるという事態が発生した。当時、新聞ではリーク記事が飛び交い、"お家騒動"の背景が報道された。筆者も当時役員だった人物のほぼ全員の自宅をまわり、自らが執筆した記事を携えて取材を申し込んだ。何の反応も示さない者が多いなか、たまたま自宅にいてコメントしてくれた者もいた。
それから1年後に「ベスト電器は生き残れるか?」というレポートを発表するわけだが、これは前出の1通の匿名投書が執筆のきっかけだった。発表後、実はさらに2通の匿名投書が寄せられていた。おそらく一般社員には知りえない、いや役員クラスでも一部しか知りえないような情報が赤裸々につづられていた。3通の投書に共通していたのは、旧経営陣とくに有薗・濱田両氏に対する怒りと、リベートと子会社(関係会社)を巧みに利用した金銭に絡む不正・背任とも思える行為を糾弾するものだった。
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