3通の投書を受け、その後、約1年かけて取材を進めてきた。そして、当社発刊の経済情報誌『I・B』3月1日号で「ドキュメント・ベスト電器 再生を阻む過去のくびき」を発表した。
当該記事で扱った内容については、以下の通り。
○解散した泰陽商事と新設のホクエイ
○急ピッチで進められた会社整理の背景
○投書に共通する旧経営陣への怨嗟
○辛酸を舐めた北田光男の創業期
○商売を支えた妻・倫と福岡相互銀行
○2代目に就任した創業者の長男・葆光
○積極的な拡大戦略で有利子負債がピークに
○聖域をなくすべく動いた3代目・有薗憲一
○ベストの拡大を支えたあるFC店のドラマ
○過去の動きから浮かぶ水面下の疑惑
○4代目・濱田時代の不正DM問題
○2010年事業構造改革の本当の背景
○代表権をめぐる解任劇の舞台裏
○商品価格に直結するリベート
○ソンズとの関係と最近の人事動向
泰陽商事はかつて、福岡市中央区今泉2-3-15に存在していた。そして同住所には(株)北栄商事という会社もあった。同社は91年7月に設立され、03年12月に清算されているが、監査役に下平明美氏の名前が挙がっている。泰陽商事はその後、福岡市中央区天神5-7-3に移転した。現在、同住所には北栄商事に似た名前の(株)ホクエイという会社がある。代表は、ベスト電器の元常務取締役だった矢ヶ部武夫氏が務めている。
これらのつながりは何を意味するのだろうか。そもそも泰陽商事とは、ベスト電器の直営・FC店舗などに対する損害保険を扱う会社だったとされる。北栄商事は判然としないが、登記上では人材教育、セミナーの開催、不動産売買・管理、事務機器のリースなど業種は多岐にわたっている。ホクエイは、ホームページ上では損害保険を主体とし、ほかに自動販売機の設置・仲介および斡旋、衛生関連機器の販売およびレンタルなどを手がけていることがわかる。そうすると、泰陽商事の仕事(損保代理)をホクエイが引き継いでいるという予測ができる。
取材のため現地を訪れた際、事務所の階数を示すプレートに着目すると、ホクエイの名前の下に、うっすらと泰陽商事の名前が消された跡が残っていた。たまたま見かけた郵便受けにも、ホクエイの下に泰陽商事の札がテープで貼られていた。しかし、ホクエイに取材を申し込んで約4日後、両社の関係性を消すかのように泰陽商事の札が剥がされていた。
投書によれば、この泰陽商事こそが、ベスト電器の暗部に潜む「不正経理の温床だった」というのだ。
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