水産県・長崎の支配者は、中村法道長崎県知事の後ろ盾でもある金子原二郎・前長崎県知事(現・参議院議員)だと言われてきた。
原二郎氏の背景にあるのが、金子一族が経営してきた金子漁業グループの力だったことは紛れもない事実なのだが、同グループは放漫経営が祟ったのか、2008年に「産業活力再生特別措置法」(産活法)の適用を申請し、国の支援を仰いで再建を目指さざるを得ない状況となっていた。
実は、その同グループの東京支店に、金子議員が地盤とともに亡父から受け継いだ政治団体が入居していることが判明。その実態を取材した。
<産活法で再生目指した「金子漁業グループ」>
08年8月、水産庁は長崎県の「東洋漁業(株)」「兼井物産(株)」「金子産業(株)」の3社について、「産業活力再生特別措置法(産活法)」に基づいて事業再構築計画の認定を行なったことを発表した。
産活法は、生産性向上を目指す事業者が事業計画を立て、農林水産大臣が認定したものに対し、会社法や税制などの特例措置により政策的支援を行なう法律だ。認定を申し出る企業によって事情はさまざまだが、1999年に制定された同法は公的資金を使って企業を支援する仕組みを定めたもので、リーマン・ショック後の09年に改正され、現在に至っている。
東洋漁業など3社が産活法の適用を申請したのは、グループ全体の経営が悪化したことが最大の要因だ。そしてこの3社は、長崎県の水産界に君臨してきた金子漁業グループの中核企業だった。
確認のため、水産庁の発表内容を紹介しておきたい。
【認定計画の概要】
東洋漁業株式会社、兼井物産株式会社および金子産業株式会社(以下、「東洋漁業(株)等」という)から平成20年7月14日付けで農林水産省に提出された「事業再構築計画」について、産業活力再生特別措置法第5条第7項の規定に基づき審査した結果、同法第2条第2項第1号に規定する事業の構造の変更及び同項第2号に規定する事業革新を行なう者として同法で定める認定要件を満たすと認められたため、本年8月18日付けで事業再構築計画の認定を行なった。
今回認定した東洋漁業(株)等の事業再構築計画は、金融機関による債権放棄および債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)を行ない、過剰な有利子負債を削減し財務内容の健全化を図るものである。
また、事業分野においては、付加価値向上のためのマグロの畜養事業や消費者のニーズに合わせた加工を新たに行なうこと等により、売上高の安定的確保を図り、生産性の向上を目指すものである。
本件の認定により東洋漁業(株)等は、登録免許税の軽減及び資産評価損の損金算入の支援措置を受けることを予定している。
【事業再構築の実施時期】
開始時期:平成20年8月
終了時期:平成23年3月
【申請者の概要】
東洋漁業株式会社
代表取締役社長:岡田秀美
資本金:9,000万円
本社所在地:長崎市鳴滝二丁目7番18号
兼井物産株式会社
代表取締役社長:岡田秀美
資本金:8,000万円
本社所在地:長崎市大黒町14番5号
金子産業株式会社
代表取締役社長:髙月守
資本金:9,000万円
本社所在地:長崎市鳴滝二丁目7番18号
(以上、水産庁の発表内容より)
なお、産活法適用の認定を受けた3社は、福岡キャピタルパートナーズ(福岡市)により持ち株会社として設立された「オーシャン金子ホールディングス」の完全子会社となっている。
<金子原二郎>
金子漁業グループを背景に漁業県・長崎を事実上支配してきたのは、前長崎県知事で現在は参議院議員の金子原二郎氏である。
原二郎氏の父は、科学技術庁長官や農林水産大臣を歴任した故・金子岩三代議士で、原二郎氏自身は2世政治家なのだが、その政治経歴だけを見れば、"順風満帆"だったと言うほかない。長崎県議3期、衆議院議員5期、長崎県知事3期、そして2010年からは参議院議員である。テレビ長崎社長の金子源吉氏は兄にあたるほか、娘の嫁ぎ先である地場有力ゼネコン谷川建設の社長は、衆議院議員谷川弥一の長男。同県を代表する閨閥(けいばつ)を形成しているのである。
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