<兼井物産内に政治団体>
水産関係団体や企業が数多く集まる東京都中央区豊海町のあるビルに、金子グループの1社「兼井物産」が入居している。不可解なことに、産活法の適用という国の支援で再建を進めてきた同社のなかに、「政治団体」の主たる事務所が置かれていることがわかった。
しかも、存在する政治団体は4団体にのぼる。総務省に提出された政治団体の届出書類や、政治資金収支報告書によって確認した団体名と代表者、会計責任者は次の通りである。
山石会(さんせきかい)
代表:吉村伸一 会計責任者:吉村伸一
新農政研究会
代表:吉村伸一 会計責任者:吉村伸一
新経済研究会
代表:岡田秀美 会計責任者:岡田秀美
農政研究会
代表:岡田秀美 会計責任者:岡田秀美
政治資金収支報告書に記載された「事務担当者」は、4団体とも「吉村伸一」となっている。吉村氏は、長く原二郎氏の秘書を務めてきた人物である。
また、岡田秀美氏は、08年8月時点の東洋漁業、兼井物産両社の代表取締役である。
これらの団体の届出書類のうち、「規約」の異動を追っていけば、もともと故・金子岩三代議士の支援団体だったものが、代替わりとともに原二郎氏の支援団体へと引き継がれたことがわかる。(下記文書参照)
驚かされたのは、4団体の2010年末の時点での資金残高だ。4団体が総務省に提出した政治資金収支報告書によれば、それぞれの政治団体の翌年への繰越額は次の通りとなっている。
・山石会・・・・・1,284万9,359円
・新農政研究会・・6,110万4,951円
・新経済研究会・・3,536万3,648円
・農政研究会・・・6,116万3,276円
4団体の残高合計は、なんと1億7,048万1,234円になる。
官報などで確認したが、これらの政治資金は長年にわたってプールされていたことが明らかとなった。グループ企業は国の支援を受けているというのに、その会社のなかに政治団体を置き、巨額の政治資金を温存してきたということになる。
到底、まともな政治家の神経とは思えない。
<山石会から資金管理団体等へ巨額の寄附>
2010年、知事の座を中村法道氏(現知事)に譲った原二郎氏は、7月の参議院選挙に自民党公認で出馬する。この年、平成兼井物産のなかに事務所を置く「山石会」は、原二郎氏の資金管理団体「明日の長崎県を創る会」(長崎市)や原二郎氏が代表を務める「自由民主党長崎県参議院選挙区第一支部」などに計4,500万円を寄附する。(下記文書参照)
3月24日「明日の長崎県を創る会」へ500万円
5月24日「自由民主党長崎県参議院選挙区第一支部」へ1,000万円
5月27日「自由民主党長崎県支部連合会」へ2,000万円
8月12日「自由民主党長崎県参議院選挙区第一支部」へ500万円
12月22日「自由民主党長崎県参議院選挙区第一支部」へ500万円
つまり、これらの寄附が行なわれるまで、東京の4団体には2億3,000万円近くの政治資金が眠っていたことになる。
<公選法上の問題点>
問題は、5月27日に寄附された「自由民主党長崎県支部連合会」への2,000万円である。原二郎氏が立候補した参院選は、「6月22日公示」「7月11日投・開票」という日程で執行されたのだが、選挙直前の県連への寄附は公職選挙法上の疑義をともなうものと言える。大がかりな買収行為を疑われても、仕方がない金の動きということだ。
前述の通り、東京の4つの政治団体は、規約上明らかに原二郎氏の支援を目的としている。しかし、これらの団体は政治資金収支の報告義務が厳しい「国会議員関連政治団体」としての届出はなされていない。制度上、国会議員関連政治団体として届出の義務が課せられているのが、国会議員自身が代表者である政治団体か、寄附金控除制度の適用を受ける政治団体とされているためだ。4団体は、規約に金子原二郎支援を明記しているにも関わらず、そのいずれでもないことから監視の目を逃れたかたち。いわば、"抜け道"を利用した政治資金処理なのだ。
産活法によって国の支援を受けるということは、国民の血税で庇護されるに等しい。しかし金子一族は、その一方で公的支援を受ける会社のなかに政治団体を置き、法的に問題を残す資金運用を行なってきたのである。
実態について話を聞くため、東京の兼井物産に取材したが、「責任者がいない」と言う。金子陣営の会計責任者に連絡を取ろうとしたが、出稿までに連絡をもらうことさえできなかった。
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