<人生を豊かにする"プロ意識">
バレエ教室という看板を掲げている以上、バレエを教えるのは当たり前だ。しかし、プロ養成学校ではないのだから、バレエ以外のところで、何を子どもたちに教えることができるのか、を常々意識する。
舞台で踊ること、普段は袖を通すことがない華麗な衣装を身にまとうこと、オーケストラの生演奏に合わせて踊ること、舞台演出ひとつひとつにも妥協をせず、質の良いものを求めるのも、そのためだ。何より子どもたちががんばっている姿を見ていると、できるだけ"本物の美しさ"で、子どもたちの舞台を彩ってあげることを自然と願うようになる。
日頃の生活とは無縁の、バレエのため、という名目の下でしかできない経験をいっぱいさせてあげたいとも思う。例えバレリーナを本職としなくても、バレエを通して本物に触れたという経験が、きっとどこかで役立つと信じているから。誰もがプロになれるわけではないけれど、プロ意識の高い環境に触れれば、バレエを離れたところでも、本物を求める気持ちを持つことができるだろう。日常を淡々と過ごすのではなく、日常のなかにも、驚きや発見を見出しながら過ごす。そのきっかけもバレエを踊ることによって与えてあげられる、と考えている。
<人はいつでも変わることができる>
そんな教育指導を行なうなかで、子どもたちに言ってあげたいことは何か。
それは「人はいつでも変われる」ということだ。
もし舞台で失敗しても、練習でできなくても、昨日できなかったことは今日やればいい。なぜできなかったのか、と省みることは大切だが、過去に戻る必要はない。なぜなら、今、この瞬間を取り巻く環境は、常に驚きと発見に満ちているのだから。
体験は、知識や感情を豊かにし、感受性や直観力を磨きはする。しかし、それが変わるべきときに変わることを迷わせるものになるのなら、思い切って忘れてしまえばいい。過去の経験に拘る必要はない、そして経験したこともない未来を過度に恐れて歩みを止める必要もない。大切なのは、今、この瞬間という舞台のうえで力を尽くすことだ。
須貝りさ先生が主宰している「須貝りさクラシックバレエPROAX(プロアクス)」。
PROAXの、PROは、professional(プロフェッショナル)、progressive (先進的な) proceed (前進する)を、AXは Actress (無限に広がる事をメッセージする)(姿勢を表現)を意味する。
何があっても諦めずにいれば、前に進むことができる。進むことができれば、いつでも変わることができる。たった一ミリの変化でもいい。それは自分が、そして自分を取り巻く環境が、より良いものになった確かな証だ。
『PROAX』とは、そのために必要な、すべてが集約された言葉なのだ
≪ (3) |
<プロフィール>
須貝 りさ(すがい りさ)
須貝りさクラシックバレエ PROAX主宰。1988年、深沢和子バレエ団(現バレエ団芸術座)93年帰福し、「須貝りさクラシックバレエ」設立県内各所のスタジオ・スポーツクラブなどでバレエ指導に携わりながらバレエ協会九州北支部、新国立劇場などの舞台に立つ。2000年、西区姪浜にスタジオを設立、後進の指導にあたるローザンヌ国際バレエコンクール主宰、指導者特別コース終了現在A・O・D・T会員バレエグループ「ひめの会」所属。01年「コッペリア」全幕、03年「くるみ割り人形」全幕、05年「ドン・キホーテ」全幕など、隔年ごとに古典作品を発表し続け、07年には「西区フィルハーモニーオーケストラ」・指揮 水﨑徹との「くるみ割り人形」全幕を発表し好評を得る。自身もそれらの作品や新進振付家によるコンテンポラリー作品などを踊るとともに、後進の育成にも力を入れている。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら