<犯人がインターネットであることは明確!>
今、ベテランの新卒採用面接官はみな悩んでいる。「面接をしていても、候補者の志望動機が全くつかめない」からだ。それもそのはず、候補者が1枚レジメを書き上げ、有名企業に、数秒で、"数撃てば当たる"マシンガン方式で「一斉送信」して来るからだ。数百社に送る猛者も珍しくない。1社で、すぐに、万の単位のレジメが蓄積される。
先日、喫茶店にいたとき、隣で就活中とおぼしき大学生二人が会話をしていた。
A「あそこも、送っといた方がいいよ。簡単だから」
B「TVで名前は知っているけど、何をやっているとこ?」
A「とにかく、多いに越したことがないよ」
B「そうだな」
このように、送られてきたレジメを、公正・中立に見る義務だけを背負っている、企業採用担当者は大変だ。マスコミは、それを充分知っているにも拘わらず、面白ければ、今回同様、すぐ騒ぎ立てるからだ。
インターネットの普及によって、就活市場が進化ではなく実は悪化、混乱している。
インターネットを使った「就活サイト」は、リクルート、マイナビの2社がほぼ独占している。現実に、新卒採用市場は、この2社の「就活サイト」で、応募、採用が一括管理されているのだ。関係者は、インターネットの奴隷となり、逃れることができない。
本来、からだは"ひとつ"だから入社できるのは、一人一社である。就職は、人生にとって大事な行事の一つである。真剣に検討して自分のレベル、自分の興味、自分の将来を考えて選べば、せいぜい10社ぐらいに絞れるだろう。多くてもレベルに合った20社だ。
インターネットの普及以前は、それで、就活市場に何の問題もなかった。そればかりではなく、企業選択が、入社時点で真剣だから、今の様に3年で平気で退職する人間の数も少なかった。
「就活サイト」に載っている企業情報は全て、企業の広告・宣伝である。お金を払っているのは企業だから、都合の悪い情報は一切載らない。
就活市場を悪化させている犯人はインターネットである。インターネットを使った応募登録を全て廃止にすればよい。これこそが、唯一、厚生労働省がやる仕事である。
機械は、規格品、標準品を大量生産することはできる。しかし、人間の持つ想像力、潜在力、智慧を劣化させる。人生を決める就活に、最も、そぐわないものである。
最後に、企業の採用担当者、就活中の学生に再度問いたい。あなたたちは、インターネットを"いじっている"だけの活動が、本当に正しい就活のあるべき姿と思っていますか?
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<プロフィール>
富士山 太郎 (ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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