<日本は障がい者が生き難い国>
"絆"という一文字を皆が心に留めるようになり、困ったときはお互い様という意識が強くなったせいだろうか。ふと、昔に比べると、健常者と共に暮らしを愉しむ障がい者の人々が増えたなと感じるときがある。スロープつきのバスの乗車口で車椅子に乗った人が声を掛ければ、運転士はもちろん、乗客も、車椅子を車内に上げるために、積極的に動いてくれるし、ショッピングモールに視線を移せば、仲良く買い物を愉しむ障がい者と、その同伴者が何組か目にとまる。
意識しているからそう見えるのかもしれない。ある程度バリアフリー施設が整った区域で、障害を持つ人が健常者に支えられてバスに乗る姿を見ているからではないかと。
カメラのレンズを向ければ、自然と被写体が魅力あるものに見えてしまうように、「昔みたいに、障がい者が生き難い世のなかであってほしくない」という目を通して世間を見ると、今の世のなかが"昔よりは"うまくいっているように見えるのかもしれないと。
だからこそ、目を凝らして、違う角度からものを見てみる必要がある。
「日本という国は、障がい者が生きやすいところではありません。『障がい者であることを不幸に思ったことはない、日本という国に生まれたことを不幸に思う』と語った、ある障がい者の言葉が、それを的確に示しています」と語るのは、一般社団法人 視覚障害者自立支援協会理事長の荒牧功一氏だ。
同氏は、2007年に視覚障がい者を支援する任意団体を発足させて以来、視覚障がい者の社会参加と経済的自立を目的とし、さまざまな事業を展開させてきた。
自立を支えるために必要な器具、機具の提供や就職支援など、具体的に自立した生活に役立つものを提供してきた。そのなかで、視覚以外の障害を持つ人々の生活も目にし、支援対象を障がい者全般に広げる必要性を感じたという。
<福祉は民間の力で変えるしかない>
「障がい者は皆、支援を待っています。でも行政はなかなか重い腰を上げてくれません。財政難であることは重々承知しています。しかし視覚障がい者のための就職先として、"針灸マッサージ"以外考えようとしないのはどうなのでしょう」と荒牧氏は問い掛ける。
「世のなか、変わっているのに、過去の考え方を現在に当てはめようとしている。進歩した技術を活かせば、他にも新しい雇用のあり方を考えられるのではないでしょうか。それが市民の望みなのです。しかし、望んだものが得られない社会のなかでは、ただひたすら我慢をするほかない。早急に新しい福祉支援の会を作らないといけないと思いました。そしてその為には、私たち民間の人間が立ち上がらないといけないのだと」
そして12年1月、荒牧氏は「みんなで築く新しい共助社会! 参加する全員がWin-Win!」をスローガンに、新たに"NPO法人障害者自立支援ネットワーク"を申請し、障害者自立支援プロジェクトの実現に向けて動き出した。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら