上海から南に約500キロに位置する浙江省・温州市。交通網の発達によって、中国高速鉄道が通っている。高速鉄道とはいえ、去年の大事故からスピードを抑えて運転していることもあり、上海から5時間ほどかかった。
地元の資料によると、温州市の都心部の人口は約300万人。温州の中心となる「温州南駅」は去年春に完成したばかりのかなり広い駅で、さながら福岡空港の国際線のよう。サイズもほぼ同規模だ。駅周辺には、ほとんどビルもなければ住宅もなく、地元の人の話では、これから開発が進むエリアなのだそうだ。
温州南駅から車で30分ほど走ると、温州の都心部に入る。五馬街(ウーマ街)と呼ばれる通りには、高級ブランド品が並ぶ店、デパート、スーパーマーケット、日本や欧米系の飲食チェーンなどが軒を並べる。ここだけ見れば、東京・銀座を思わせるほど洗練された街並みだ。ただし、一本路地を入っただけで、ごみごみとした、いわゆる「発展途上のアジア」の風景が見られる。そこからさらに、車で10分ほど進んだところに、「温州の顔」とも言うべき、雑貨の問屋街が見えてくる。
温州は古くからが盛んな街として知られ、家電製品、衣料品、靴、かばんなどの中小企業や工場があちこちに点在している。私企業が集まり、問屋街を形成していて、取材した問屋街は、敷地面積13万3,000平方メートル、4,000以上の店が軒を連ねている。そこでは、靴なら靴、布なら布といった、同じ種類の商品を扱った店舗が一列になっていて、問屋街は網の目のように無数の通りを形成している。午前10時の開業とともに、大量購入する業者の車が次から次へと入っていった。
この問屋街で古くから布製品を扱っている40歳代の女性に取材をすることができた。温州の人は昔から商売人が多く、金儲けが好きな国民性なのだとか。知人には、「金貸し業」に転進して、大儲けした人もいるそうだが、自分はまだまだだという。昨秋、メガネメーカーでは温州で最大手の社長が夜逃げしたというニュースが全国紙で報じられた。その後、社長は温州に戻り、経営は回復したと報じられているようだが、このテのニュースは現地ではあとを絶たない。温州では大もうけした個人企業の経営者がいる反面、資金繰りが厳しく、自殺する経営者も出ているという。このあたりの問屋街も数年のうちに、大きな商業ビルが建つ予定で、ビルの1階部分に大きなマーケットをつくる計画があるらしく、今はそれが楽しみだと話してくれた。
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