<メンタルの弱い日本のトップエリート>
まず、トップエリートの人材教育で問題点が浮上する。日本の上位の大学は、ペーパーでの表向きの点数にこだわるあまり、タフなリーダーを育てようとはしていない。
「日本の大学教育は、エリートの作り方が、根本的に間違っている。庶民はしっかりしているけれど、リーダーがだめというのが現況です」
山内氏は語る。「ハーバード大学などの一流大では、入試で、満点に近い点数を取るのは当たり前です。エッセイなどの書類や面接で、いかにリーダーとしての資質があるか、メンタルが強いかどうかを見られます。日本はそういう入試をやらない。点数だけを取れる、メンタルの弱い人間が東大を出て、リーダーとして、組織を動かしている。リーダーの弱い組織は、ピンチに陥った時、特に弱い」
トップの務めは、いかにピンチの時に、働くか。政治的リーダーがこんなにころころ変わって、平然としているのは、日本だけ。何かがおかしいことにそろそろ気づかなければならない。
ハーバード大など優秀な大学の留学生に、日本人がいないことを、「ジャパンナッシング」と表現する。そして、日本の大学が、欧米やアジアの学生に軽視され、留学先として選ばれずに飛ばされることを、「ジャパンパッシング」という。ナッシング&パッシングが、すでに始まっている。このまま何も手を付けなければ、アジアの留学生たちからも日本の大学は、選ばれなくなる。「それはなぜかというと、『日本の大学では何も学べない』からです」と、山内氏は、警鐘を鳴らす。
<エリートの仕事は雇用の創出>
トップエリートたちの仕事は、「雇用を生み出すこと」。優れた人材がレベルの高い教育を受け、リーダーとして立ち、産業を興し、多くの人を雇う。
国の頭脳とでも言うべきトップエリートたちが、大衆に対して、仕事を提供する。そのエリートたちのリーダーシップが優れてさえいれば、大衆は、そのリーダーシップについていくだけでいい。国の経済は回っていく。しかし、今の日本はそうではない。
高度経済成長期を経て、日本は豊かになったが、バブル崩壊以降、豊かな中流は崩れた。
「それは、日本のエリート教育が間違っていたから。日本のリーダーはメンタルが弱い。原発事故のような危機に陥った時に、それがさらけ出る。ハーバード大学などでは、『メンタルがタフでないとリーダーは務まらない』という前提のもとに、強いリーダーを作ることを目標にして、人材教育を行っています」
ピンチに陥った時、いかに、そのピンチに立ち向かい、適切に対処し、選択し、判断し、正しい意思決定をできるかどうか。タフなリーダーを育てるために、大学も進化しなければ、グローバル社会は戦えない。
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