温州と上海を定期的に行き来している葉叶(ヨウ)さん(38)は、ニンジンなどの薬材を扱う仕事を上海でしていて、同い年の妻がいる。離れて暮らしている妻とは温州で衣料関係の工場を経営している。妻の工場はミシンを扱うスタッフが十数人。年間2万枚のシャツを生産していて、主にヨーロッパに輸出しているという。ヨーロッパの景気が悪いのと、中国の物価高の影響も手伝い、ここ最近はかなり経営が厳しいという。それに加え、温州では、若者を中心に人手不足だという。月額2,000元(約3万円)でスタッフを雇っているが、食事と寝泊りする場所の確保は当たり前、いい人材には倍以上の給料を払ってでも人材確保が大事になってきているという。
葉さんが以前いた会社は温州の中小企業だったが、そこの社長は投資に大変興味を持っていたそうだ。社長は事業で稼いだ金を不動産投資だけでなく、企業に高利率で融資するヤミの金貸し業も行なっていたそうで、かなりの大金を稼いでいたという。知り合いのなかでも、金貸し業をやっていた者もいるが、最近はとくに政府の監視が厳しくなっているので、個人での金貸し業は手を引き始めているという。
新華社通信によると、温州市における昨年1年間で倒産した中小企業は100社以上にのぼるという。去年秋には、経営難による経営者の自殺が連続して3件発生し、地元でも大きな話題となったそうだ。温州はほとんどが葉さんの妻のような中小企業のメーカーで、輸出が中心だ。インフレ抑制のために、銀行が貸し渋りをすれば、高金利の「個人金貸し業」が暗躍する。政府の監視が強くなれば、企業の資金繰りがより厳しくなり、「倒産」の坂道を転がり落ちていく。いま温州は悪い流れがぐるぐると循環しているのである。
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