福岡Yahoo!JAPANドーム(通称ヤフードーム)で親しまれているインターネットサービス大手のヤフーに激震が走った。3月1日、井上雅博社長(55)が退任し、後任には宮坂学執行役員(44)が昇格する人事を発表した。6月下旬の株主総会後に就任する。取締役4人のうち3人が退任するという総入れ替えである。唐突なトップ交代に、筆頭株主のソフトバンク社長を務める孫正義会長(54)との微妙のズレを指摘する向きも...。
<SNSを使ったことがない>
井上社長は記者会見で、「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使ったことがなく、携帯電話もカバンに入れたまま。いつも引け目に感じていた」と述べ、スマートフォン(高機能携帯電話)の普及など、ネットの世界の急速な変化についていけなくなったことを退任の理由に挙げた。
ヤフーの業績は好調だ。2012年3月期の売上見通しは約3,000億円、経常利益は約1,600億円で、上場企業のトップ50に入る。1996年の創業以来、増収増益。時価総額は1兆円を超えている。短期間でここまで伸ばしてきたのは、間違いなく井上社長の功績だ。同席した孫会長は、現経営陣について「98点ぐらいのレベル」と高く評価している。
だが、ネットの世界で猛烈な勢いで伸びているスマートフォンやSNSでは、劣勢気味。最先端のサービスを活用しきれていないことを辞任の理由に挙げたのは、それなりに納得できる。会見では、孫氏と井上氏のすき間を垣間見せた。井上氏がヤフーから完全に退任し、ソフトバンクの取締役も「残らないと思う」と話したのに対し、孫会長は「せめてソフトバンクは続けてほしい」と慰留する場面があった。辞任の背景に何があったのか。
<日本最大のネット企業に育てた功労者>
井上氏は1957年2月東京生まれ。東京理科大学理学部数学科では、コンピュータープログラムの作成に没頭したパソコン・オタクの先駆けだ。ソード電算機システムを経て、87年にソフトバンクのシステム関連会社であるソフトバンク総合研究所に転職。92年にソフトバンクに移った。"技術オタク"の井上氏が経営センスを現し始めるのは、その2年後。社長室・秘書室長になり、孫氏の鞄持ちとして米国のIT見本市コムデックスやジフ・サービスの展示会・出版部門などとの買収交渉に携わるようになってからだ。
孫氏は、その足でインターネットの検索サービスを行なうヤフー(以下、米ヤフーと表示)のあるカリフォルニア州シリコンバレーに飛んだ。台湾出身のジェリー・ヤン氏と白人のデビット・ファイロ氏がスタンフォード大学院の院生時代に起業したベンチャー企業で、従業員も5〜6人いるだけ。孫氏は言った。
「ぼくはきみたちに5%出資させてもらうよ。それから、日本でジョイントをやろう。日本法人の資金はこちらで用意する。出資比率は6対4。そちらで出す4割の分も、こっちで貸与するから安心してくれ。キャッシュも出さなくていい。開発も移植も、そっちの人間を送り込まなくていい。こっちから人間を派遣して、あとは開発や作業はこっちでやる」。
COMPANY INFORMATION
ヤフー(株)
代 表:井上 雅博
所在地:東京都港区赤坂9-7-1
設 立:1996年1月
資本金:79億4,200万円
売上高:(11/3連結)2,924億2,300万円
※記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら