我が国のセメント業界においては、1996年度以降生産高が減少傾向にあることは、既に紹介した。「仏ラファージュ社(以下ラ社)は、3年前から韓国などアジア市場の戦略を見直している。いずれ我が国の市場もその対象になる公算が高い」と業界関係者は話す。
鳩山総理(当時)は2009年10月、所信表明演説で「造ることを前提に考えられてきたダムや道路、空港や港などの大規模な公共事業について、国民にとって本当に必要なものかどうかを、もう一度見極めることからやり直す」とした。「コンクリートから人へ」の理念に沿った形で硬直化した財政構造を転換する方針を表明したのである。この「コンクリートから人へ」の所信表明によって、セメント・生コン業界の斜陽化に拍車がかかった。
ここ福岡においては、大型の公共工事はほとんど期待できない。「現況は、東九州道くらい」と県の生コンクリート業界関係者は話す。北九州や福岡地区で民需のマンションの新規工事は発生している程度で、数値では持ち直している(県下生コン出荷量11年度累計、282万3,021㎥前年比105.1%)とみられるが、「一過性のことで、何も施策を講じなければどんどん下落していく。1社単独では、基本的にはアクションを起こしてもどうにもならない。業界全体で自治体や国に働きかけていくことが業界再興に繋がる」。だが、協同組合方式で流通する生コン業界は、受け身の状態である。
「ラ社本社は、日本の生コン業界の協同組合方式での商売を理解することに苦慮したようだ」と語るのは、セメント業界関係者。「よって、組合員やアウトサイダーという縮図はあまり関係がない。分け隔てなく積極的に営業展開した」(同)福岡県内で27工場、県外の九州地方で38工場、計65工場。近畿、中四国の各府県72工場が麻生ラ社のセメントを納入した実績がある。これらの工場は、麻生グループおよびグループ外、協同組合員およびアウトサイダーと多彩である。またセメントのサービスステーションを南は鹿児島、東は愛知県豊橋市まで20拠点置く。このように業界内で4%というシェアである一方で、九州・四国そして中国・関西および関東エリアまで、均衡を意識した営業展開を実践してきた。01年のラ社の経営参画後より、製品品質マネジメントの強化に着手し、ユーザーの要望をマーケット調査した結果を技術指標として数値化した品質指標(IQP:Indicator of Quality Performance)を独自に設定。この指標の100%を目指すなどグローバルスタンダードの視点で経営参画したラ社の旧麻生セメント社への影響度は、株式保有39%より高かったことは、業界の誰もが周知していた。
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