<まずは大阪都構想の行く先を見よ>
永田町が消費増税をめぐる論議で霞が関官僚の敷いた「増税路線」を邁進しているさなかの今月24日、橋下徹・大阪市長が代表を務める「維新政治塾」が開講式を開いた。受講者は46都道府県だけではなく海外からも集まった2025人で、当初は3000人強が申し込んだのだから、1000人が書類審査で落とされたことになる。6月までに更に受講生を半数に絞込み、これらの生き残り組を次期衆議院選挙などの選挙に立たせるという狙いだ。
維新の会によると、近畿2府4件から1147人のほか、東京都から316人、東北27人などであり、みんなの党の立候補予定者も参加しているという。
類似の政治塾は、橋下の「維新塾」だけではなく近隣の愛知県の大村秀章・県知事も開講しており、講師陣は露骨に重複している。しかし、もともとこの種の政治塾は同じく大阪の松下幸之助が始めた松下政経塾を嚆矢(こうし)とし、その他、東京圏では、元マッキンゼーで原子力工学に詳しい大前研一の「一新塾」や小沢一郎・元民主党代表の政治塾もあり、それぞれが国会議員を輩出しているが、今の中央政界の状況を見ればわかるように、霞が関官僚にいいように遊ばれている。それにしても松下政経塾の初年度の申込者が190人ほどだったことを考えると、インターネット時代の情報の広がりが、これほどの募集者を集めたのだと感心する。しかし、単に「祭りに参加」したいというムードで参加した人から、実業をなしつつ政治に参画したいと考えている人など玉石混交のようだ。
ただ、世論調査によると、既成政党への失望は強く、維新の会の国政進出を期待する声は、フジテレビが今年の2月に行った世論調査では64.5%に登っており、他の調査も同じような結果が出ている。
ただ、橋下市長にはまず維新の会が国政に出ると浮かれ騒ぐ前に、自らが府知事時代に掲げた大阪都構想についての一定の目処をつける必要がある。橋下に注目する人は、この大阪都構想がどのような安定軌道にのるのかどうかを見届けてから、彼の政治的手腕、彼のもとに集まる政治勢力の力量を判断しても遅くはないのではないか。
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<プロフィール>
中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。
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