3月31日に事業を停止し、4月5日付で破産申請の準備に入った(株)アイビック。不動産賃貸ショップの「ミニミニ」のFCとして、本社を置く福岡市南区を中心に店舗を展開。そのほか、新築分譲マンションの販売代理業を行ない、約2億円台の業績を計上していたが、当時は地場の一不動産業者としての位置付けであった。
同社の業績・知名度ともに押し上げたのが、08年に販売を開始した念願の自社企画マンション「ハイグランド香椎駅前」である。その後の物件開発についても意欲的な姿勢を持ち、同年における売上は12億円超を計上。業績は同規模で推移していくと予測され、不動産の賃貸・売買業者からデベロッパーとしての道を歩み出したかに見えた。
しかし、同社を今回の破綻へと導いたのも、同じくデベロッパー事業によるものだ。第2弾となる自社企画マンションの着工時期と同時期に、リーマンショックが発生。不動産市況は冷え込み、当初の予定を大幅に変更せざるを得ない状況になっていた。工事の長期間の停止、それに伴う借入先への元金据え置き期間の延長と利払いなど、同社を取り巻く環境は悪化。近年はデベロッパーから身を引き、当初のFC店舗による不動産業へと事業規模を縮小していた。
かつては、新興のデベロッパーとして取り上げられる機会もあった同社だが、事業停止直前には、登記上本社を置いている南区大橋の店舗運営のみとなっていた。栄光からのあまりに早い転落劇は、デベロッパーとして事業展開していけるだけの体制が整っていなかったことにある。高い知名度を誇っていた同社の倒産に、同業他社は注目を集めている。
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