ソフトバンクは3月27日、傘下のプロ野球福岡ソフトバンクホークスの本拠地である「福岡Yahoo!JAPANドーム」(略称・ヤフードーム)を、シンガポール政府不動産投資会社GICリアルルエステートから870億円で買収した。昨季は日本一に輝き、観客動員数は200万人を超えてリーグ首位。だが、最大のネックは本拠地球場に高額な使用料を払う契約を締結していたこと。ヤフードームの買収で、球団と球場の一体運営が実現する。
<球団と球場の一体運営の必要性>
プロ野球経営の要諦は、「高額な球場使用料の問題」と「球団と球場の一体運営の必要性」にある。これをキーワードに12球団は3つに分類できる。
球団が球場の営業権を保有する一体運営型。阪神タイガース(阪神甲子園球場は阪神電鉄の所有)、オリックス・バファローズ(京セラドーム大阪はオリックスグループの所有)の2球団。球場内で発生した収入はすべて球団の収益になる。
球団が球場の営業権を持たない球団・球場分離型。読売ジャイアンツ、東京ヤクルトスワローズ、中日ドラゴンズ 横浜DeNAベイスターズ、日本ハムファイターズの5球団。日ハム以外はセ球団。球場内で発生した飲食関係の収益は、球場に入る。東京ドームには広告看板が山ほど出ているが、100億円以上にのぼる広告看板料はすべて球場を貸している東京ドームの収入になり、読売巨人軍には1銭も入ってこない。
球団が営業権をすべて持たないが、営業収入を得られる契約を結んでいる折衷型。広島東洋カープ、東北楽天イーグルス、埼玉西武ライオンズ、千葉ロッテマリーンズ、福岡ソフトバンクホークスの5球団。広島以外はパ球団だ。このタイプは、球団使用料が高額か低額かで分かれる。高額使用料が福岡ソフトバンクで、低額のそれが東北楽天である。
<福岡ソフトバンクのネックは50億円の使用料>
ドームは、ダイエーが1993年に開業。土地を含めた事業費は760億円。ダイエーが球団と球場を所有する一体運営型だった。だが、同社の経営悪化で一体運営から外れる。03年にドーム、ホテル、複合商業施設を合わせた3点セットが米投資会社コロニー・キャピタルに売却され、07年に1,000億円超の金額でGICに転売された。
一方、球団は04年にソフトバンクがダイエーから買収した。しかし、球団買収時、ドーム球場に年50億円という高額な使用料を払う契約を締結。「こんな莫大な使用料を払ったのでは球団の黒字化は困難」と球界を驚かせた。
ソフトバンクにとって、高額な使用料は喉に刺さった骨で、いかに削減するかが経営課題。今回、ドーム球場を870億円で買収したことで、悲願としてきた球団・球場一体運営にこぎ着けた。これで一体運営型は、阪神、オリックス、ソフトバンクの3社になる。
ドームは、ソフトバンクが設立した特別目的会社(SPC)がGICから買収。当面は球団運営を手がける福岡ソフトバンクホークスマーケティングに貸し出すかたちを取るが、15年7月に同社が完全取得する。球団・球場一体型に移行することによって、年間50億円の使用料が30億円に削減できるという。
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