<ほぼ素材でできたシンプルな化粧品たち>
「事業化する10年くらい前から、蒸留の事業はNPO法人の交流事業という形で行なっていました。その頃から蒸留水を使っていて、これがいいものであることは実感していました」と語る。水俣の生産者との協力もあり、森田氏が作ったネロリの蒸留水は、NPO法人の交流事業を経て、現在、ネローラ花香房のオーガニックスキンケア商品である「NEROLI-Jシリーズ」やアロマ雑貨の大切な原料の1つとなっている。
「NEROLI-Jシリーズ」には、ネロリジェイウォーター(保湿化粧水)、ネロリジェイフローラルオイル(美容オイル)、ネロリジェイクリーム(保湿クリーム)がある。ネロリジェイウォーター(保湿化粧水)に関しては、有機JAS認証の甘夏花水、エタノール、グリセリンの3種の成分のみ。同社の商品はどの商品も成分表示がわかりやすい。あまりのシンプルさに利用者やメーカー関係者に驚かれることも多いという。
「うちは化粧品としてプロではありません。この化粧品は、見れば分かるように、素材100%で出来ているようなものです。製造工場の方は、合成化学について勉強されて、学校も出て、専門家としてキャリアを積んでこられています。そんな方たちからは、なぜこれだけで化粧品になるのかが、不思議だとおっしゃる方もいらっしゃいます。私たちのずっと使用してきている経験をもとに製造の方と商品開発を行いましたが、やはりなかなか上手くいかないことも多かったです」(森田氏)
試行錯誤の末、完成した商品は、良いものにこだわりたいという女性、肌の悩みがある方だけでなく、ネロリの香りの優しい香りに惹かれて、老若男女関係なく、ファンは徐々に増えてきているという。中には家族そろって「ネロリジェイシリーズ」使う熱心なファンもいるそうだ。
<生産者と消費者を想った化粧品づくり>
海外産のネロリの原料価格は、非常に高い。主要生産国はチュニジアやモロッコで、人件費は非常に安価であるにも関わらず、欧州各国での需要が高いことから価格が高騰しているという。
同社では、甘夏生産者が仮に果実で生計が立てられなくなっても、花で生計が立てられるようにしたいという思いから、生産者から高めの値段で花を購入している。今後、ほかの業者が参入したとしても、同社の購入価格がスタンダードになれば、生産者が値下がりすることに困るほどはないだろうと踏んでのことだ。
「やはり、良いネロリを使った化粧品ですから、一部の人に使えないという製品にはしたくありませんでした。そのため、原料代を高く購入する一方で、製品代の価格はなるべく安く抑える努力をしています」(森田氏)。
生産者の利益を考えたうえで、消費者にも広く使ってもらえるような価格バランスを探るのに、苦労したという。
また、安価な海外産化粧品と戦うことになっても、「国産オーガニックネロリ」という付加価値で対抗していくべく、同社の製品はフランス・トゥールーズに本拠地を置く国際的なオーガニック認証機関「エコサート」の認証を受けている。これは、製品の95%が自然原料であることを基準にしている認証で、日本で製品認証を受けているケースはまだ少なく、九州地域では現在のところ同社だけである。同社がこの認証を取得できたのは、長年無農薬甘夏の生産に携わっていた、信頼のおける生産者の協力のおかげといっても過言ではない。
■甘夏ネロリの里花摘みツアー2012 in 水俣
5月3日、5日に水俣にて、ネロリの花摘みツアーが実施されます。
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<プロフィール>
森田 惠子(もりた・けいこ)
(株)ネローラ花香房代表取締役。20代の頃からYMCA、YWCAなどの国際協力団体で、アフリカ、アジア地域との国際交流事業に携わる。NPO法人「くまもとレインボープロジェクト」の代表を務めていたなかでの縁もあり、ネロリを使った化粧品に携わるようになる。2009年1月に法人化し、事業を本格化させた。
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