中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
今年(2012年)2月、中国の5億を超える網民(ネットユーザー)を沸かせた「王立軍事件」は、思わぬところで重慶市内に影響を及ぼしている。
4月の初め、重慶市警察が、重慶から上海まで高速道路で12,033発の軍用砲弾を積んだトラックを押収した。運転手は、重慶市のある会社の委託で貨物を吉林へ運送するところで、どんな貨物か分からないまま運んでいたという。その後、公安局の調査で「正常な軍用運送」であったため、事なきを得たのだが、現在、重慶ではこうしたピリピリムードが漂っている。
文化大革命中の1971年に起きた林彪クーデターを思い起こさせる事件ではないかと揶揄された「王立軍事件」は、中国共産党重慶市委員会書記である薄熙来(はく・きらい)書記の右腕として敏腕を振るっていた王立軍(副市長・公安局長・公安局党委員会書記)が、四川省成都市にあるアメリカ領事館に逃げ込んだというものだ。
「打黒」(ヤクザ撲滅)の英雄、王立軍が公安局長の座から外されたかと思うと、成都市の米領事館に逃げ込むというこの事件。「暗殺を恐れた」、「トカゲの尻尾切り」、「裏切り」、「政権クーデター」などさまざまな憶測が飛び交っている。
3月に開催された中国共産党全国代表大会(全人代)直後の記者会見で、温家宝首相が重慶市トップの薄熙来書記を暗に批判した直後、今秋の政権交代で最高指導部入りが確実視されていた薄熙来書記は更迭されたようだ。
薄熙来書記は日本企業も多数進出している大連市の元市長、日本人との親交も厚いという。果たして今秋の18大(中国共産党第18回全国代表大会)の政権交代までには、他にも大きな動きがありそうだ。
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