<日本の大学、企業に魅力がない>
前回、教育改革は(1)入試(2)教育(3)就職のセットで考えていかなければならないと述べた。そして、主に入試・入学と教育について言及した。
今回は、(3)の就職について考えたいと思う。今、留学生の関心が最も高いのは、就職(将来のキャリア設計)の話なのだ。
筆者は最近留学生(多くは東大、東工大の技術系大学院生)に対し、日本でのキャリア形成について講演する機会を得た。講演終了後、今回の一連の報道の感想を聞いてみた。
「米国に留学するのか、英国(中国等で増加傾向)に留学するのか、日本に留学するのかを決める時、最も重視する点は自分の卒業後のキャリア形成のあり方です」と答えている。さらに「国として、魅力があるかどうかを考えます。日本は、高度経済成長の時、大きな魅力がありました。残念ながら、今は・・・」と付け加えている。
どんなに入試制度を改革しても、試験日や入学時期などの小手先だけの変更をしても、何にも変わらない。日本そのもの、日本の大学の中味が魅力的にならなければだめなのである。これが二番目の問題点だ。
魅力に欠けるのは、長期的に経済が停滞していることも大きな原因だが、そればかりではない。留学生の6割は、卒業後、日本で就職を希望している。しかし、実現できているのはその3割である。
ここ2、3年で新たに留学生枠を設ける企業や、従来の留学生枠を広げる動きも出ている。しかし、大企業では、将来の幹部候補というよりも、"要員採用"のイメージが抜け切れていない。入社後のキャリアプラン(幹部への昇進等)も日本人に比較すると、不透明で、留学生に不安を与えているのだ。
日本の大学に魅力がないという話もある。特に国立大学の教員は、教える能力、スキルがとても低いという。何よりも、欧米と比較して熱意が感じられないというのだ。
この点は、日本人でもなんとなく理解できる。それは、象牙の塔では、研究者が高く評価され、教える技術がどんなに高くても評価に値しないからだ。授業を休み、熱意に欠け、学生から評価されない先生はすぐ首になる欧米と大きく違う。さらに、米国のように、ノーベル賞級の学者であっても、自分の研究室の運営資金は自分で稼ぐという緊張感も
ない。
早稲田大学は、私学としては、「国際教養学部」を中心に英語講義に力を入れており、留学生が日本で最も多い。それでも、外国人教授・講師を除けば、英語で満足に講義ができない教員も多いし、熱意の点では欧米に劣るという印象を与えている。(帰国子女学生の感想)
<プロフィール>
富士山 太郎 (ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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