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経済小説

「維新銀行」~第一部 夜明け前(26)
経済小説
2012年4月26日 11:00

<第四章 植木頭取時代>

次期頭取誕生までの栄光と挫折(3)

 当時の福岡銀行は、三井三池炭鉱を中心とする筑豊の石炭産業と1950年(昭和25年)4月に「過度経済力集中排除法」により日本製鐵を分割して誕生した八幡製鐵を中心とする鉄鋼産業を背景に、地方銀行トップの座に君臨する有力銀行であった。そのため福岡銀行従組が経済要求を貫徹するために、中央闘争委員会にストを含む一切の争議の指令権を付与したことは、維新銀行を始めとする全国の銀行に大きな衝撃を与えることになった。

(要求書)
一、ベースアップに関する要求書
(1)昭和28年4月1日現在における全従業員に対し19才1500円(アップ後の基本月収額9000円)、54才8150円と各年齢別の加算額を決定(この結果現行1万5200円べースが約25%アップの1万9000円べースとなる)
(2)右加算額は男子行員、男女傭員は特別手当、女子行員は現在の本俸に一律に120円を加算し、残額を特別手当に加算する。
(3)昭和28年度の新規入行者の初任給は男女同一として、新制高校卒業者9000円、新制大学卒業者1万2200円、旧制大学卒業者1万3050円とする。
二、退職手当金に関する要求書(略)
三、長期療養者対策に関する要求書(略)

 上の三要求の回答期限は6月15日であったが、この日ついに回答なく、25日に延期を申入れてきたのを一週間に短縮、22日の団交において1万7000円の賃上げ回答が出されたが、拡大中委はこれを不満として闘争体制に入ることを決議し、28日の臨時大会召集を決定した。この間、20日には、要求貫徹のため団結を要望するとの掲示が某株主の手で破り棄てられた。

 24日に降りはじめた雨は26日には西日本を襲う豪雨となり交通は寸断され、拡大中委は罐詰となり、臨時大会開催も不可能となった。銀行側は「豪雨が早く来ていたら、あの回答は出さなかったのだが」と回答の白紙還元を示唆して恫喝的態度に出、しかも罹災した従業員を省みぬ態度は組合員を憤激させた。

 この結果、7月5日の臨時大会は、前日の「暫定4月より1万7000円プラス7月より月割臨給1000円支給」の回答を蹴って闘争宣言を発し、闘争委員会の設置を全員一致で可決し、さらにこの中闘にストを含む一切の争議の指令権を附与する件について投票。
 投票総数 308、賛成(304)、反対(3)、無効(1)の圧倒的多数で決定した。

(つづく)
【北山 譲】

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