<留学生政策は、外交戦略の一環>
本来、留学生政策は文部科学省だけのマターではなく外交戦略の一環である。
これが三番目の問題点である。アメリカはフルブライト奨学金、ロータリー財団奨学金制度等を使い、洗脳、親米派を育ててきた。米国留学帰りの日本の政治家、財界人の言動をみてもそれは見事に成功していると言える。
同様に、日本の留学生政策の基本は、
(1)知日派の増加(2)外貨獲得(3)日本企業の人材確保という3本柱で考える必要がある。文部科学省は、年間200億円、約1万人の国費留学生を受け入れている。しかし、彼らが、本国に帰り、今、どの様な地位で活躍しているかのデータがなく、評価もしていない。
いわば、税金の掛け捨てである。
留学生政策で大きな成果を上げている、オーストラリアという国がある。米国は人口、約3億人で留学生72万人、オーストラリアは人口、約2,000万人で留学生が52万人もいる。
この数字だけで、どれだけ留学生政策に力を入れ、また効果を出しているかがわかる。過去の経緯は色々とあるが、現在は、留学生を石炭、鉄鉱石と同じ輸出品に位置付けている。
一方、日本には、2020年までに日本への留学生を30万人にしようという「留学生30万人計画」というのがある。もはや、誰が考えても達成は不可能である。
日本の留学生は現在、約14万人で、その内約8.5万人が中国で1位、2位は韓国で約2万人、3位は台湾で、約5千人となっている。大学別順位は、1位は早大で3393人、2位は日本経済大学で3378人 3位は東大で、2877人になっている。(日本学生支援機構調べ)
3位の東大を抑えて2位にランクされている日本経済大学はご存じだろうか。早大の偏差値が70、東大が75であり、10位までの大学も全て偏差値70前後ある。しかし、同大学の偏差値は40である。日本経済大学は、福岡県大宰府に本部のある都築学園グループが経営する大学だ。実は同グループには、入学定員問題、所得税申告問題、総長わいせつ問題、教員不足隠ぺい問題などで当局の取り調べを受けた前科がある。
同大学の渋谷校の生徒は留学生が99%であり、その内のほとんどが中国人である。この現実に、日本に住んでいる見識の高い中国人は、文部科学省の留学政策、大学許認可システムに不信感を抱いている。人数が増えれば、良いというわけでもないのである。
所得税申告に不正がないなら、日本の外貨獲得には役に立っている。修士号や博士号を乱発して国際問題に発展しないことを祈るばかりである。
最後になったが、東大が"秋入学"移行の理由として挙げているもう一つの理由に、日本人の海外留学の障害を取り除くというのがある。しかし、実態は誰もが予測できる通り、日本人海外留学の障害は(1)渡航滞在費不足(経済的理由)(2)語学力がない(勉強不足)(3)日本での就職に不利(就職)であり、今回の"秋入学"議論とはほとんど関係ない。
詳細については、別の機会に触れたい。
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<プロフィール>
富士山 太郎 (ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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