<どうしたら大学生に勉強して"いただける"か?>
文部科学省は、4月16日に、中央教育審議会からの提案を受けて「学生に勉強させる方策を講じた大学を財政面で優遇する」することを決定した。
約700の全国公私立大学の学長と約2100人の学部長にアンケートを行ない、学生の学習時間を増加・確保する為に実施している方策の有無を調査する。学生が勉強しない原因や学習を増やす為に取り組んでいる「教育方法」を書いてもらうという。
野田内閣が、いくら学芸会レベルだからといって、霞が関官僚も好き放題、やり過ぎである。そもそも大学は幼稚園ではない。今さら、大学生に、勉強方法を他人が指導してどうするのだ。大学に行かずに、真面目に働いて税金を払っている若者、大学以外のところで、日夜、真面目に勉学に励んでいる若者にも失礼である。今や、大学生は特別な存在ではない。
大学は勉強をやる為に行くところである。勉強が嫌いならば、即刻大学を辞めればいいだけのことだ。どのみち、その程度の認識ならば、就職などできない。ろくな社会人にもなれない。その彼らに、再度、就職時に、「新卒雇用対策」として無駄な血税を使うことになる。
この「平和ボケ」した状況を、日本に来ている欧米、特にアセアンの留学生は笑っている。余りにも、日本の大学生が勉強しないからである。彼らは、死にもの狂いで頑張っているので勝負にならない。
「全国大学生調査」(東大・大学経営政策研究センター実施、2007年)によると、授業に関連する学修の時間(1週間当たり)で日・米の差が歴然と出ている。最大の比率を占めるのは米国が11時間以上(58.4%)で、日本は1~5時間(57.1%)である。日本の平均は4.6時間で、週5日換算でも、大学生が1日1時間勉強していないのである。年間換算すると米国の学生との差は約250時間になる。
大学生ばかりにこの責任があるわけではない。このような状態にさせたのは、「ゆとり教育」など文部科学省の文教政策の失敗が原因だ。自分たちの失敗を、税金を使ってお茶を濁すとは何事だ。まずは、国民の前に自分たちの首を差し出すのが筋だ。
今月から7月末まで、全国の大学で計10回、大学教育改革をテーマにしたフォーラムを開く。そのテーマは「どうすれば学生の学習時間を確保できるか」だ。文部科学省の幹部と有識者と言われる文化人、大学職員、教員、学生が討議する。このような意味のないものに、謝礼、車代、飲食代、お茶代等まで国民の血税を使われては困る。
文部科学省幹部のコメントにはあきれるばかりだ。「学生が勉強しない要因を大学がどう分析しているかなどを把握し、大学改革につなげていきたい」(同省幹部)と、自分たちの責任、罪の意識は微塵もなく、まるで他人ごとである。
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<プロフィール>
富士山 太郎 (ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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