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経済小説

「維新銀行」~第一部 夜明け前(27)
経済小説
2012年4月27日 13:26

<第四章 植木頭取時代>

次期頭取誕生までの栄光と挫折(4)

bi.jpg 福岡銀行従組の要求は、これまでの給与闘争が多分に利益配分闘争の傾向をもっていたのに対し、生活権擁護闘争を強く打ち出し、能率給の拡大に反対して生活給を確保することを中心にしたことであった。福岡銀行の経営陣にとっても、従組の要求を丸呑みすれば、さらに要求がエスカレートすることを恐れて安易な妥協はできなかったし、従組の要求を呑めば日本全国の銀行に与える影響は計り知れないものがあり、受け入れることができないジレンマがあった。
 経営側の強硬姿勢に対抗するように従組の要求もさらにエスカレートし、中央闘争委員会の設置を決め併せてスト権を付与する深刻な事態に直面することになった。

 7月5日、福岡銀行従組は、経営側に対して争議状態に突入するとの闘争宣言を発して、労使関係は泥沼の事態に陥ることになった。
 維新銀行の首脳は、目と鼻の先にある福岡銀行の経営陣と従組との関係が拗れ、スト権の確立まで進んだ深刻な事態に大きなショックを受けるとともに、入行間もない中谷の意見を取り上げ、行内に不穏な動きを出さないための対策を秘密裏に講じていくことを決めた。

(闘争宣言)
 6月5日、我々の提出したベースアップ、退職金、長期療養者対策に関する要求は、茲数年来の当行収益の著しい向上、並びに他銀行他産業の実情に比較し極めて謙虚にして最低の要求である。又最近に於ける社会一般の生活環境に於いて、銀行員の体面を保持し安心して行務に精励するためには、今回の要求では未だに極めて不充分である。特に今時の水害に伴う諸物価の暴騰に依り我々にとってこの要求は愈々切実となり一刻の猶予も許し難いものとなった。しかし我々はあくまでもこの要求を労資相互の信頼と誠意ある交渉によって平和裡に解決することを希い今日迄隠忍自重、凡ゆる努力を尽くして来たが、銀行は或る時は他行の情勢、或る時は組合の強弱、最後には水害の影響等極めて一方的乃至抽象的言辞を弄して未だに我々の切実なる要求を理解していない。

 我々は最早これ以上忍耐する事は不可能である。従って我々に与えられたる合法的手段に訴えて、我々の謙虚なる要求を貫徹する為に本大会に闘争委員会の設置を決議した。茲に我々は7月8日午前9時以降銀行との間に争議状態に突入することを宣言する。
昭和28年7月5日

福岡銀行従業員組合
第9回臨時組合大会

(つづく)
【北山 譲】

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「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」


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