<海外で人気のある日本食>
クリエイティブ産業のすそ野は、食や観光などにも広がる。海外では、日本食の人気も高いが、この海外で広がる日本食という分野にも、当の日本は不在であることが少なくない。現地の人が日本食をまねて日本食レストランを経営したり、欧米ではアジア系の人たちが「日本食」と称して経営したりしていることも多い。
これら世界に広がる日本のモノから生まれる利益を1%でも取り込むことで、日本経済に少なくとも10兆円程度の利益還元になるのだという。戦略的に海外展開を行なえば、日本の新たな「収益源」になりうる。経産省の推計によると、世界の文化産業全体の市場規模は、900兆円以上と言われている。戦略目標として、このうちの8兆~11兆円(現状は約2兆3,000億円)の獲得を目指す。
アニメなどのポップカルチャーだけでなく、ファッション、伝統文化、日本の生活に根づく文化、日本食なども幅広く含まれ、それらのポテンシャルを考えると、この目標は法外な数字ではない。
しかし、日本食やファッションなどに関わっている企業、団体などは中小企業が多く、リスクを考えると、簡単に海外進出というわけにはいかない。商機があるのに、そのチャンスに飛び付けない状態。そこで、官民が合同でこれらをフォローし、商機をきっちりと取り込める仕組みを作っていく。「束ねる」ことを官で誘導していく。
<初音ミクなど多大な波及効果>
モノづくりは、たとえば、100個作ったら100個以上売れることはない。しかし、クリエイティブ産業では、たとえば、影響力のあるキャラクターが創出されれば、そのキャラクターの生み出す波及効果が大きい。ひとつのクリエイションから連鎖的に利益が生み出せる。
たとえば、「初音ミク」だ。札幌市のクリプトン・フューチャー・メディアが創り出したボーカロイド(音声合成システム)の「初音ミク」は、米トヨタ、グーグルのCMに起用されたり、ロサンゼルスで開催されたアニメエキスポでコンサートを行なったりし、アメリカでも成功。コスプレの衣装、キャラクター商品など関連の経済効果は100億円を超えたと言われる。初音ミクの人気は、キャラクターの版権をある程度自由に使えるようにしたことで、クリエイターの間で、ネットを中心に二次的な創作がなされ、海外に広がった。
ただ、想定を超えて発展したコンテンツに対し、権利保護、二次創作など知的財産に関する法律が追い付いていないなどの課題が垣間見える。
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