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経済小説

「維新銀行」~第一部 夜明け前(28)
経済小説
2012年5月 1日 15:27

<第四章 植木頭取時代>

次期頭取誕生までの栄光と挫折(5)

clock.jpg 朝鮮戦争の最中である1951年(昭和26年)9月18日、日本とアメリカ合衆国を始めとする連合国軍との間で、サンフランシスコ平和条約が締結(翌年4月28日発効)され、日本は主権を回復したが、日本の労働運動は当時の経済及び社会情勢を背景に過激化し、かつ政治的色彩を色濃く反映するもとなっていく。

 そのような状況のなかで、福岡銀行の従組は、53年7月8日より、争議状態に突入し、銀行側に団体交渉再開の意志が見られないと見るや、同日午後から非営業部門が無期限ストに突入。

 同業の福岡市内の都銀・地銀の従業員も合同の職場大会を開いて、福岡銀行従組の闘争を支援し、更に日本最大の労働組合組織となった総評の福岡県支部も支援に乗り出した。

 一方経営者側も組合に対抗するために、課長や支店長等の管理職に第二組合結成を働き掛けて組合潰しを画策するなど、労使間の対立は双方の総力を挙げた中傷合戦まで繰り広げられるほどに泥沼化。ついに本店営業部が無期限ストに突入し、本店全体が異常な空気に包まれる事態に発展していった。続いて、交渉委員から銀行側に誠意なしとの報告を聞いて第一回中闘を開き、指令第0号(支部闘委の結成、争議行為の準備)、第1号(8日より全店一斉リボン、福岡非営業部門一斉昼食休憩、全店水害被害者一斉賜暇)を発令した。

 8日、予定通り全店一斉リボン佩用をおこなったが、銀行側に団交再開の意志がないため、同日午後から非営業部門は無期限スト(事務スト)に入った。組合の団結は固く、福岡市内の各市銀、地銀は合同職場大会を開いて闘争支援を決意し、県総評を中心とする友誼団体の支援、激励も活溌となった。

 これに対して銀行側は課支店長らに第二組合結成を働きかけ、新聞、ビラで「組合側のしている行動は銀行の公共性より見て遣憾であり、会社は誠意を以って解決にあたっている」との声明を発表した。
組合側は「銀行員は何をしているのでしょうか」のビラ5万枚を印刷して、11日から街頭宣伝にのり出し、また組合切りくずし工作を封ずるため、協約の部分協定としてユニオン・ショップ制の締結を申入れた。

 久しぶりの団交が開かれたが、進捗せず、銀行側は「団交時間は1時間」という条件を出したり、抗議を聞き入れず重役室に鍵をかけて交渉を打切るに至った。13日、先にビラを破った株主は暴力をふるって組合員を負傷させる事件も起った。組合は無期限ストを再確認すると共に、全員辞表提出を決議した。

 14日には、ついに本店営業部が無期限ストに突入し、非営業部のストも続行され、これ以後、本店全面ストとなり、事態は一層険悪化した。

(つづく)
【北山 譲】

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「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」


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