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ITを駆使した"賢い"送電インフラ~「スマートグリッド」の今後(1)
特別取材
2012年5月 1日 14:00

 低炭素化、電力使用の最適化などに期待されている「スマートグリッド」。アメリカ、中国など世界各国も開発を開始。日本でも横浜市、北九州市などで実証試験が行なわれている。日本型スマートグリッドの導入で、どのような都市になるのか。「スマートシティプロジェクト」を推進する横浜市を取材した。

<新しいインフラ「スマートグリッド」>
 "次世代送電網"と訳される「スマートグリッド」。その最先端を行くアメリカでは2009年から多くの企業が参加し、技術開発、実証試験を開始。オバマ政権の掲げる国家プロジェクト「グリーン・ニューディール」のなかでも最重要のエネルギー政策に位置づけられ、約750億円の予算を投入し、システム開発、送電インフラの整備に乗り出している。

 国土がアメリカより狭く人口密度の高い日本は、電線網が安定しており、必ずしもスマートグリッドは必要ないとする向きもあった。しかし、東日本大震災後、電力を取り巻く事情は一変した。

 日本は現在、原発再稼働など深刻な問題を抱えており、電力使用がピークを迎えるであろう夏場に向け、電力供給の状況は芳しくない。ITの技術が目に見えて進歩した昨今。ITの技術を駆使して電力の需給を双方からコントロールし、効率化を図るスマートグリッド。災害など緊急時のエネルギー安定供給の必要性の高まりから、日本でもスマートグリッド導入に本格的に力を入れ始めた。すでに"賢い"とも言われる日本の送電網だが、再生可能エネルギーを大規模導入するためにも、アップデートしなければならない。

<横浜市などで実証実験開始>
0501_yokohama.jpg 日本版スマートグリッド実現に向け、横浜市、北九州市、京都府けいはんな学研都市、豊田市の4地域で、社会システム実証試験が始まっている。

 横浜市で横浜スマートシティプロジェクトに携わる、温暖化対策統括本部プロジェクト推進課の名倉直課長は、「市民にとって都市としての快適さ、利便性だけでなく、災害時にもエネルギーを安定供給するためのシステムが必要となってきています。簡単には倒れない、さらに、災害が起こったとしても短時間で復旧できる復元性を持ったシステムの実現を目指しています」と話す。

 横浜市では、この実証試験で、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーの大量導入を可能とする分散型電力網のインフラを整え、危機発生時にも地域におけるエネルギーを安定して供給できる「スマートシティ」の構築を目指している。民間から、日産自動車、東京電力、東京ガス、アクセンチュア、明電舎などが参加し、効率的なエネルギー使用を可能とするITシステムや蓄電池の開発を行ない、市民も参加して実証が始まった。

(つづく)
【岩下 昌弘】

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