東証一部上場のゴルフ場運営会社で業界首位のアコーディア・ゴルフ(東京都渋谷区)の専務が社長のコンプライアンス(法令順守)違反を告発したお家騒動は、同業で業界2位のPGMホールディングス(東京都港区)との全面戦争に発展。PGMを傘下に収めたパチンコ・パチスロ業界トップの平和(東京都台東区)側によるM&A(合併・買収)の仕掛けだったことが、明らかになった。
<専務が社長を告発>
アコーディア・ゴルフの秋本一郎専務(54)は4月17日、都内で記者会見し、竹生道巨(ちくぶ・みちひろ)社長(62)による会社財産の私的流用などの疑いがあると告発した。会見報道によると、秋本専務に、3月下旬に株主から不正行為の情報が文書で寄せられた。子会社などから聞き取りした結果、「竹生社長が親密な5人の女性に(本来無償の)同社ゴルフ場モニター料として約2,400万円を支払うなど、概算で5,000~6,000万円の私的流用の疑いがある」と指摘したという。
同社は2002年に米投資銀行コールドマン・サックスが買収した日東興業のゴルフ場運営子会社で、06年11月東証一部に上場。今年経営破綻した太平洋クラブのゴルフ場を引き受け、153コース(12年3月末)を持つ国内最大手。昨年1月、コールドマンは間接子会社を通じて保有する議決権比率44.8%の株式を売却して撤退。ここから大混乱が始まる。
<アコーディアの反撃>
専務の内部告発から10日経った4月26日、アコーディアの大株主らが「株主委員会」を設立し、6月の株主総会に向けて、取締役と監査役候補者を株主提案した。株主委員会に名を連ねているのは、同社株を1.9%保有する大株主で、平和の子会社のパチスロ機メーカー・オリンピア(東京都台東区、兼次民喜社長)、告発した秋本一郎専務、法人、個人の匿名株主の6名。株主委員会が推す取締役役候補は、秋本氏や元最高裁判事の才口千春氏、元金融庁長官の日野正春氏ら8名、監査役候補は元検事総長の大林宏氏ら3名となっている。
アコーディア側は反撃に出た。4月27日、パチンコ・パチスロ機大手の平和の子会社で同業のPGMホールディングス側から経営統合の提案を受けていた、と発表した。それによると、1月26日にPGM側から提案があり、両社は数回にわたり交渉。その後、3月22日にPGM側から交渉を凍結すると申し入れがあったという。
交渉のやりとりを生々しく再現している。4月15日、秋本専務より、竹生社長に対し、「コンプライアンスに関する情報をリークされたくないのであれば、竹生が社長を辞任し、秋本を社長にするとの条件を受託するよう再度要求があった」。
その席で、秋本専務による、「神田有宏さん(PGM社長)がスキャンダルの話を出してきまして、その方がTOB(株式公開買い付け)よりお金がかからない。社長の首をとっちまえば統合できるじゃないかという発想になった」との発言を暴露している。告発者の秋本氏がアコーディアの社長に就けば、PGMはアコーディアと株式交換方式で統合できるので、安く上がるというわけである。
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