飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長してきたソーシャルゲーム業界に、強烈な逆風が吹きつけた。大型連休明けの5月7日の東京株式市場で、携帯電話を通じたゲーム事業を展開しているグリーとディー・エヌ・エー(DeNA)の株価が急落した。グリー株の終値は、連休前に比べて500円(23%)安の1,651円、DeNA株も同500円(20%)安の1,990円と、いずれも値幅制限いっぱいとなるストップ安だった。交流型ゲームの新商法「コンプガチャ」について、違法報道が伝わり、売り注文が殺到した。
<違法報道でストップ安>
「子どもの日」の読売新聞(5月5日付朝刊)は、「コンプガチャは違法懸賞、消費者庁が中止要請へ」と報じた。それによると、「携帯電話で遊べるグリーやモバゲーなどのソーシャルゲームの高額課金問題をめぐり、消費者庁は特定のカードをそろえると希少アイテムが当たるコンプリート(コンプ)ガチャと呼ばれる商法について景品表示法で禁じる懸賞に当たると判断、近く見解を公表する」という。
コンプガチャを採用している人気ゲームには、DeNAのモバゲーで遊べる「怪盗ロワイヤル」やグリーの「探検ドリランド」などがある。
コンプガチャは、ゲーム各社の収益源として期待が高かっただけに、5月7日の東京株式市場には、収益悪化懸念が台頭。違法となれば、これまでに使った金額の返還を求められる可能性もあり、先行きの業績に対する警戒感が強まった。値下がり率は時価総額500億円以上の国内銘柄で、グリーが首位、DeNAが2位。
昨年来、消費者庁がグリーやDeNAなどソーシャルゲーム関連業界に対して、何らかの通達をするのではないかという観測が流れ、これによって株価が下がってきた。そして今回、コンプガチャ商法は違法との報道で、売り注文が殺到した。5月7日の終値は、グリーが最高値2,840円(2011年11月9日)に比べて41.9%減、DeNAが同4,330円(11年8月18日)比54.0%減。これから、もっと下落していく。
<コンプガチャ商法とは>
「ガチャ」とは、グリーやDeNAが運営しているソーシャルゲームの収益モデルであるアイテム課金のうち、景品くじ方式と呼ばれるものを指す。1回100~500円程度を払うと、ゲーム内で使うアイテムなどが当たる仕組み。特定のアイテムをそろえるとレア(希少な)アイテムが入手できる。これを「コンプリート(コンプ)ガチャ」という。
「ガチャポン(ガチャガチャ)」とは、昔からある子ども向けのカプセル入りおもちゃを販売する自動販売機のことで、これになぞらえてガチャと呼ぶ。出てくるまで何が入っているかわからない点が、同じだからである。
たとえば、釣りゲームの場合。無料ではすぐ折れる釣り竿しか使えないが、通常のアイテム課金では、丈夫な釣り竿が買える。これがガチャ課金では、同じ金額を払っても、すぐ折れる釣り竿か、絶対に折れない釣り竿かは、出てくるまでわからない。このようにギャンブル性が強いため、気に入った釣り竿が出てくるまでゲーム上のガチャポンを回し続けて、何万円も使う子どもが出てきた。
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