今回孔氏から頂いた言葉は「君子不器」である。さすがに、孔子直系76代目ということで、「論語」からの引用だ。
言葉の解釈は、「君子と言うものは、器(うつわ)のように、形の決まったものではなく、環境や果たす責任に合わせて、その考え方や言動を柔軟に成長させるものでなくてはならない」ということである。人は、今まで経験したことや学んだ知識により、一定の概念や価値観を形成しがちだ。そして、成功者した経営者ほど、自分自身が築き上げたことに対して、固執する傾向がある。
経験や既成概念に固執せず、その時の状況等を客観的に認識し、常に柔軟な思考で、分析や行動をすることに気を配れば、正しく判断ができ、新しい発見もあり、結果的に成功に辿りつけるというものだ。中々、いい言葉である。
孔氏自身も、日々の日本人との付き合い、中国に進出する日本企業の支援、中国企業と日本企業との提携支援等で実感しているという。特に、「国を股がまたがると、技術、ビジネスの前に、"文化"の相互理解が重要です」という。
孔氏は、さらに「例えば、"中国でビジネスするのは難しい"と言われる日本の経営者の方は多いのですが、どうして難しいのかを考える方は意外と多くありません。多くの経営者の方は、ご自分の経験、価値観に固執して考えてしまう傾向があります。
中国は、今まだ発展途上にあり、急速な速度で、いわゆる"器"が変わっていきます。つまり、入れるのは同じ水なのですが、器としては、様々なペットボトルが出現しているのです」という。
孔氏は、自身の成功体験から、「情報は集めるだけでなく、自分で分析し、相手の文化が
理解できれば、必ず"ウィン・ウィンの関係"を構築できます」と自信を持っていう。
来日して24年、華人(日本国籍)になった今でも、日本文化に関してはまだまだ学ぶことがとても多いともいう。
面白い例を頂いた。「日本では、"赤信号みんなで渡ればこわくない"という言葉が流行りましたが、中国人には理解できません。中国人の場合は、一人一人が自律しており、渡るか渡らないかは各自が決めるからです。一方、日本人は他律的傾向が強いように感じています。日本人は同じ人でも、環境によって行動が変わることがあります。中国人の行動は、その人間の育った教育環境によってきまり、いわゆる社会環境に左右されることがほとんどありません」実は、孔氏もこの違いは、来日10年を過ぎてから分かり始めたという。
一番強く実感したのは、日本テレコム情報通信研究所・研究員時代に、日本テレコム、チャイナテレコム、清華大学の連携・研究開発プロジェクトをコーディネートした時らしい。これも、2006年に独立して、日中間ビジネスの経済交流促進に役立ちたいと考えた理由の一つとなっている。
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