<国会でも議論済みのはずだが...>
PCB処理の遅れに関して、国会で論議されたことがある。政権交代前のものだが、2009年6月の通常国会で、民主党の長浜博行議員が質問に立っている。
「『緊急の課題であるPCB廃棄物処理を行なう国の唯一の機関』として設立されたJESCOが、その特権的地位を乱用して、政府からの天下り職員にいつまでも安定した職を保証したり、PCBおよびその廃棄物を保管する者や、これらの運搬に関わる業者に対して、実情に合わない一方的な要求や指導をしたりすることがあってはならないと思われる。現状をどのように認識しているか。PCB廃棄物法で定めた期限内での安全な処理に向けての、政府の見解を明らかにされたい」
という長浜議員の質問に対して、当時の自民党・福田康夫首相は次のような答弁を行なっている。
「(前略)関係法令に従い、事業基本計画に定める処理の完了の予定時期までに、PCB廃棄物の処理を完了するよう事業を行なっており、これまで適正にその業務を遂行してきているものと認識している。環境省としては、PCB特別措置法に基づき環境大臣が定めたポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画に沿って、今後とも適切にPCB廃棄物の処理が進展するものと認識している」。
実際には、09年時点でPCB処理の遅れが明るみに出ていたが、何の処置も施されなかった。現状のPCB処理の遅れを見ると、問題提起に対して、いかに手を付けずに放置し、本気になって対応してこなかったかが明らかだ。
<莫大な追加予算が必要?>
JESCOは、PCBの事業規模は約4,000億円としているが、専門家の指摘によると、実際はゆうに4,000億円を上回るという。元凶は高濃度PCBの処理方法だ。世界では燃焼式で処理されている高濃度PCBだが、日本では化学処理によるシステムを採用している。化学処理は先行事例がなく、操業後の処理工程において多くの技術的課題が見つかっている。新たな課題が見つかっていくうちに、初期には1トンあたり約180万円だった高濃度PCBの処理費用はみるみると上がり続け、現在は1トンあたり約3,000万円まで高騰しているという。
JESCOによると、高濃度PCBの処理量は、11年3月時点で3,652トン。処理対象とされている高濃度PCBは約1万9,200トン。よって残りの約1万5,500トンだけでも、4,000億円を超えてしまうことになり、途中段階で明るみには出ていないが、今後、莫大な追加予算が必要になってくるとみられる。しかも04年から7年かけて処理できた高濃度PCBは、わずか3,652トン。このペースだと、すべて処理するまであと35年以上かかることになる。
また、PCBは1972年に生産中止となったが、その時点でのPCB生産量は約6万トン。高濃度PCBの処理対象が約1万9,200トンだというJESCOの数字は、あくまでも「処理施設計画時の推計値」というが、この数字にも疑問符が付く。高濃度PCBの生産量と処理対象量が、あまりにも開き過ぎている。もし、約6万トンが残っているのだとしたら、このままのペースでいけば処理が終わるまで105年かかることになり、地域の負担や予算は莫大なものになる。世界各国からの信頼も失うだろう。
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