4月18日、東京・原宿に洋服の青山がFCで運営する「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」が日本初上陸を果たした。これで数年来続く外資系の低価格衣料品チェーンがほぼ出揃い、迎え撃つ日本勢との戦いはますます激しさを増す。大手メディアは「価格が安い衣料品ブランド」をすべてファストファッションのごとく紹介しているが、それは大きな誤解だ。ここでは各社のポジション整理をしながら、戦略の行方を検証する。
<H&Mと同ビルの出店が魅力をアップ>
フォーエバー21は米国ロサンゼルス発のファストファッションである。福岡天神店は同日オープンした隣のH&M天神店に比べると、お客の入りはいいようだ。同社は2009年4月29日、東京原宿に日本第1号店をオープン。1年後の10年4月29日、松坂屋銀座店にグッチの後継店として、大型業態をオープンさせて一躍話題となった。
3号店は渋谷、そして4号店はららぽーと横浜店に開店。福岡天神店は首都圏、関東以外では初めてで、それだけ九州にかける意気込みが伝わってくる。
日本では今期開店の4店舗を加えた計10店で年商250億円は堅いと言われるから、1ブランドで稼ぎ出す額としては驚異的だ。しかも日本だけの傾向でははなく、ニューヨーク、ロサンゼルス、ドバイなどグローバルな衣料品チェーンが多数展開する地域でも、業績は予想をかなり上回っていると言われている。
やはり、リーマンショック以降の消費不況が追い風になっているのは間違いないようだ。日本1号店はH&M原宿店の隣という絶好の立地だったことで、同店の魅力を押し上げなおかつお客の比較選択させたことが快進撃に繋がった。福岡天神店もそうした成功体験のもとで、同ビルに出店したと言えるだろう。
また、同社はローコストオペレーションを徹底するため、広告宣伝や販促にもシビアと言われているが、日本上陸に当たっては大々的なプロモーションを展開。福岡出店に際しても地元メディアを活用したパブリシティを展開するなど、販促手法は濃やかで巧みだ。
<商品調達も経営もすべて世界標準>
ただ、 フォーエバー21がいきなり消費者の心をとらえたのは、安さ、つまり価格競争力である。福岡天神店で購入した女性に聞くと、「いち早いトレンドなので、安い方が冒険できる」などと、非正規雇用など生活が不安定になるなか、衣料費を抑えたい消費者にとっては価格が第一で、品質は後回しのようである。
それ以上に若い女性を惹き付けるのが「かわいいデザイン」。日本人はパリ発の尖ったモードより、ポップで、フェミニンなLAスタイルの方を好む。しかも、トレンドを押さえながら、レースやフリルなど隅々に凝った加工は、シンプルな着こなしが苦手な日本女性向きだ。
さらに店づくりは逆にゴージャスで、配色や照明、試着室までデザインは秀逸。実は同社のオーナーは、韓国系米国人のチャン一族。つまり、感性もサイズも近いところが日本人には合うのである。
商品は少量、多品種で展開し、毎日新しい商品が入荷するため、売場の鮮度は常に高い。それが「今買わないと後悔する」と消費者の購買意欲をそそる。こうした商品の調達は、ODM(相手先ブランドによる企画・生産)とOEM(相手先ブランドによる生産)で、ベンダー(アパレルメーカー)からの仕入れ。チャン会長夫人が毎日メーカーをまわり、サンプルを確認して買い付けている。
旬のファッションを捉える感性と先見性をもち、商品の調達から出店、経営スタイルまでのすべてがグローバルスタンダード。日本のアパレル、小売りとは全くビジネス発想が違う点が同社の強みと言える。
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