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JALを再生させた稲盛和夫流の部門別採算制度とは何か(後)
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2012年5月22日 07:00

<社内売買で原価計算する>
 アメーバー経営では、組織を小さな単位に分け、収入と経費の差が、その部門の利益になる。部門間でモノを取引するときは、価格を設定して「社内売買」をするわけだが、このときよく揉める。

sora_5.jpg JALの例で説明してみよう。2011年4月から部門別(=路線別)採算制度を取り入れた。部門別採算の砦は路線統括本部という部門だが、メーカーに置き換えると理解しやすい。この統括本部が、臨時便を飛ばす際には、必要な機材(=航空機)を持っている路線からは飛行機を、客室本部からは客室乗務員(=キャビン・アテンダント)を、運航本部からは運航乗務員(=パイロット)を、整備本部からは整備士を買う。

 そうやって臨時便を1つの製品として作りあげて、これを営業本部に売る。営業本部に臨時便が売れたら、売値と仕入れ値の差額が路線統括本部の利益になる。つまり、営業本部への売値が、路線統括本部の収入になり、飛行機やパイロット、客室乗務員、整備士に対する支払いが支出になって、その差額が利益もしくは損失となるわけだ。

 部門間の取引だから、自分の部門の利益を大きくするためには、高く売りたい、安く買いたいとなる。当事者同士の"商談"ではなかなか決まらない。お互いの利害がぶつかり、日々大喧嘩だ。親方日の丸で育ったJALの社員にはカルチャーショックだったようだ。

 その時には、上のポストにいる役員が調整する。関係部門の説明を聞いて、いくらでやろうと決める。一度決まった単価については文句を言わない。3カ月やってみて、うまくいかなければ、もう一回やり直す。従来は月次決算が固まるまで3カ月かかっていたが、部門別採算制度の導入によって、路線ごとの収支が1カ月後に出るようになった。

<セクショナリズムに陥る弊害も>
 部門別採算制度の留意点は、部門長に大幅な権限を委譲することにより、責任を明確にできる半面、セクショナリズムに陥る可能性がある点。部門長は、収入は最大に、費用は最小にを目指すわけだから、利益を最大化するために部門エゴが強く出る。

 部門エゴを抑えるカギを握るのは部門長を集めた会議だ。JALで、部門別採算制度の勤務評定の場となっているのが、月1回、3日連続で開かれる業績報告会である。出席者は、全役員、本部長、グループ会社の社長。もちろん稲盛名誉会長も出席する。稲盛氏から、「お前は評論家か」と怒鳴られた部門長もいるという。

 以前、稲盛氏の経営思想を学ぶ「盛和塾」に参加した中小企業の経営者の話を聞いたことがある。部門別採算制度の導入によって、社員全員が部門ごとの収入と費用がいくらで、利益がいくらかが、わかるようになり、経営に対する参画意識が高まる。機能別に組織を編成するよりも、部門採算の方が利益管理の徹底には向いているという。しかし、セクショナリズムにはほとほと手を焼いた様子であった。部門別採算制度が順調に稼動するには、セクショナリズムを抑えるトップの強いリーダーシップにかかっているといえそうだ。

【本誌取材チーム・佐伯 司】

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