我が国は、国土面積の大きさで言えば、世界第66位の38万平方キロメートルに過ぎない。しかし、排他的経済水域という視点で見れば、日本の海域面積は国土の約12倍に当たる405万平方キロメートルにも達する。これは世界第6位の「海洋大国」であることを意味している。「資源小国」と言われて久しいが、危機をチャンスに変える意味でも、ここらで視点や発想を大きく転換させる時ではないか。時代は「海洋資源大国・日本」の新たな船出を待っている。
確かに、我が国は現在、東日本大震災が引き起こした原発事故の影響もあり、深刻なエネルギー危機ともいえる厳しい状況にある。代替エネルギー源として石油、石炭、天然ガスなどの輸入を急速に拡大しているが、エネルギー価格の高騰は日本企業の国際競争力を弱めている。そのため、政府ではエネルギー政策を白紙から見直す作業を進めており、2012年夏を目途に「革新的エネルギー・環境戦略」の策定を急いでいるところである。
一方、視野を世界に広げれば、地球環境問題の解決に向けての取り組みも避けては通れない。要は、世界的なエネルギー問題や食糧問題等が人類共通の課題として我々の前途に大きく立ちはだかっているのである。「リング・オブ・ファイアー」と言われるように、世界各地で火山噴火や巨大な地震、津波など自然災害の嵐が吹き荒れている。途上国を中心に人口爆発は収まらず、食糧や水の奪い合いも日常化するようになった。
こうした問題を創造的な観点から解決し、国際社会の安定化に貢献するためにも、海洋資源を最大限に活用することは、我が国にとって今後の目指すべき方向性と言えるだろう。我が国には、長い歴史を通じて養ってきた「海とともに生きる」知恵と高い技術力が備わっている。日本人独自の経験と未来を切り開く技術的なアイディアを組み合わせ、人類すべてに対し、「海からの贈り物」を提供することが持続的な経済社会発展の基本となるに違いない。
なぜなら、「海と太陽の恵み」から、人類は自らの生存にとって欠かせないあらゆるものを生み出すことができるからだ。であるならば、我々はこれまで培ってきた自然界との調和を重視する生き方、そしていわゆる「物質循環」に価値を見出すライフスタイルを、これからの時代のビジネスモデルとなるように進化させねばならない。次世代に資源をバトンタッチするためにも、無限に近いエネルギーを秘めた海洋と太陽の力を活用しない手はない。再生可能エネルギーとしては、太陽光や風力を源とする発電は急速に利用が進んでいるが、海洋資源の活用はこれからだ。
では、具体的な「海からの贈り物」として、注目すべき価値の源泉とは何であろうか。一般的には、海洋資源として認知度が高いのは石油、天然ガス、メタンハイドレードなどである。しかしこれらの海底資源の開発には、莫大な資金と国際的な争奪戦という高いハードルが横たわっている。
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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。
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