「いまどきの若者は...」と、昔から聞き慣れたフレーズで、某キャバクラ店長は切り出した。「ウチに面接を受けに来た女の子が、その面接中に『チョットいいですか?』と言って、バッグからおにぎりを出して食べ始めたんです。あきれて何も言えませんでした」。
極端な例と思えるが、同店長曰く「そこまでなくても、昔からすればマナーがなっていない子が増えている」という。人の入れ替わりが多い業界で、数多くの例を目の当たりにしてきた同店長の「いまどきの...」には説得力を感じてしまう。
接客商売にとって一番の商品は、やはり『人』。厳しい店はトイレの後もチェックする。「三角折」がされているかどうかを見るのだ。さらに同店長は「最初のリピーターは店の雰囲気で決まる」と続ける。隣に座る女の子の接客も大切だが、「また、来ようかな」と思わせるのは、受付やボーイの対応、店の内装などという。これらは「客が嫌でもすぐには変えられない」要素と言える。
たしかに振り返ってみれば、小心者の小生のあるかないかわからない"逆鱗"に触れ、「2度と来るか!」と言わせしめた店は、『ボーイがタメ口』『説明ナシで小生を30分以上放置』『店内が陰気でカビ臭い』など。そうした状況にあること自体に不満を感じ、それ以外のことにも不安を覚えてしまう。
店の雰囲気や内装に関係してくることだが、このところの中洲では、堅実な経営を行なっている地元・九州の経営者の健闘が目立つ。豊富な資金力から、一時期、人件費をつり上げ『人』の流れを変えた東京や名古屋などの"外資系"で撤退した店も少なくはない。
もともと福岡や博多は数多くの支店があり、よそ者が多い土地柄。「支店経済」で発展してきたとも言われている。それこそ東京からの出張・転勤も多く、中洲には観光客も訪れる。何らかの"ご当地的なもの"が求められるのだ。なかには、「自分たちの職場・中洲を知ってほしい」と、店の娘の歴史研修があるMLHグループのように、「いまどきの...」と言われる世代への教育を熱心に行なっているところもある。
景況の影響もあるが、今、すでに"中洲色の設備"が整っているリース物件が街に貢献しているようだ。1カ月のコストは中洲大通りで1坪あたり2万円から2.5万円前後。内装代がかかるスケルトンの物件よりも開業資金が抑えられ、万が一の閉店リスクを軽減できる。郊外の同程度の物件と比べると決して安くはないだろうが、中洲ファンとしては、良い意味でのバトンタッチを続けてもらいたい。「イザとなれば小生も...」と思い、「BAR萬月」のオープンを夢見ているところである。
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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