<沖縄を支配する「沖縄被害者史観」>
5月15日、米軍普天間基地がある宜野湾市で、「沖縄復帰40周年記念式典」(政府・沖縄県共催)が開催された。
沖縄県では毎年5月15日を「新たな屈辱の日」とする市民団体などがデモ行進を行なう。今年も記念式典の会場から南に800メートルの公園では、市民約50人が集まり、「復帰記念式典弾劾」「基地はどこにもいらない!」などと書かれた赤い垂れ幕、のぼりを手に過重な基地負担に反対するデモ行進を行なった。
地元メディア(琉球新報、沖縄タイムス)は、わずか50人規模のデモ行進でも大々的に大きな写真とともに掲載するのに、復帰を肯定する行事などは、1,000人以上が集まってもほとんど報道しない。
地元メディアや市民団体は、沖縄地上戦や戦後の米軍統治、復帰後も存在する米軍基地問題を沖縄の苦悩の象徴とする「沖縄被害者史観」に基づいて報道し、行動している。
「沖縄被害者史観」から沖縄県民は脱却しなければ、沖縄と本土の溝は、いま以上に深まり、沖縄を虎視眈々とねらう中国の思うツボになるだけである。
<真の自立を阻む沖縄への予算投入>
復帰後の40年間に投入された沖縄振興予算は、総額で9兆2,144億円にのぼる。平成24年度予算でも、使途の自由度の高い総額1,575億円の「沖縄振興一括交付金」を創設し、交付金を含む振興費総額も概算要求より500億円上積みされ、沖縄県の要望に満額回答となる約3,000億円となった。
また、沖縄本島北部地域の市町村には、普天間基地の名護市辺野古沖への移設を促進する目的で、平成12年度から10年間にわたり、合計で約900億円の振興事業がつぎ込まれている。
これだけの予算が沖縄県に投入されても、沖縄の経済は自立できるどころか、逆に失業率は日本一高い。新産業も芽生えていない。沖縄県へのこの40年間の莫大な予算投入は、県民のために役立ったのだろうか、という疑問が沸いてくる。
沖縄県内の観光業関係者は「復帰以降、反米軍基地闘争に明け暮れ、莫大な援助を自立経済の確立に生かそうしなかったのは認めざるを得ない。沖縄は自己検証すべき時期に来ている」とも述べている(産経新聞・平成24年5月15日)。
復帰40年が経ち、沖縄県の未来を切り開くためにも、知事以下県民みずからが知恵を出して、自立できる処方箋を示す時期に来ているのではないだろうか。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。 公式HPはコチラ。
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