日本にとって今後の循環型エネルギー社会の構築を模索するうえで、極めて有望と思われる海洋資源の一つは"藻類"である。というのも、地球上に存在するあらゆる創生物は藻類が行なう光合成によって生じる二酸化炭素を資源として固定化することで得られるからだ。言い換えれば、こうした過程で誕生する資源は「永遠に枯れることのない資源」に他ならない。その意味では、物質循環の象徴的な存在と言えるだろう。
現在、藻類については各国で様々な研究開発が進められているが、今後、実用化、産業化が期待できる分野として、次のような可能性が指摘されている。
すなわち、藻類を原料としたバイオ燃料など、エネルギー資源、あるいはバイオケミカル資源としての活用。そして、藻類に凝縮されたレアアースの回収や医薬品への活用など高加価値資源化。また、藻類そのものを食糧、飼料、肥料として活用する方法も研究が進む。
加えて、海洋環境の悪化傾向に対して、藻類の持つ浄化作用を活かした水産資源の保護、育成活動への応用なども検討されている。
たとえば、最近注目を集めているのは、フコイダンである。
これはコンブ、ワカメ、モズクなどの粘質物に多く含まれる食物繊維で、1996年の日本ガン学会で制がん作用が報告されたため、健康食品として一躍脚光を浴びるようになった。いまだ、科学的、臨床的なデータは限られているようだが、この「海からの恵み」フコイダンには「肝機能を改善する」「血圧の上昇を抑える」「抗菌作用がある」「アレルギー体質を改善できる」「コレステロールを下げる」などの効果も期待が高いところである。
さらには、沖縄の浅瀬の海に生息する「オーランチオキトリウム」と呼ばれる単細胞の藻に、驚異的なバイオ燃料の生産力が隠されていることも明らかになっている。筑波大学の渡邉信教授によれば、国内の耕作放棄地などを活用し、この藻類を培養し、生産施設を約2万ヘクタールにすることで、「日本の石油輸入量に匹敵するバイオエタノールを供給できる」という。しかも、自動車用の燃料として1リットル50円以下にできるというから、まさに「夢の燃料」となる可能性があるといえよう。藻からバイオ燃料を抽出する研究は世界各地で進められているが、日本の研究者が最先端を走っていることは間違いない。
要は、藻類一つをとっても、実に多様な可能性を秘めた創生物であるということ。このような藻類パワーを活かした新産業の育成は、単にエネルギー産業や資源の有効活用にとどまらず、我が国が世界に誇る高い技術力の蓄積を持つ農業や水産業、そして医療の分野と融合させることで、これまでにない海洋産業として大きな雇用を生み出す源泉となる。
こうした発想で海洋資源の利用範囲を広げていくことは「海洋国家・日本」にとって極めて重要な意味を持つに違いない。我が国にとって幸いなことに、洋上風力発電や海洋温度差発電、あるいは潮流発電などから得られる自然エネルギー源と組み合わせれば、より実用性の高い海洋資源戦略の要(かなめ)となるはずだ。
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。
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