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経済小説

「維新銀行」~第一部 夜明け前(45)
経済小説
2012年5月28日 07:00

<第五章 谷本次期頭取誕生の軌跡>

協力者達との絆(1)

 この章から、谷本亮二を介して山上正代が維新銀行との関係を深めていったのか。また山上が第五生命の首脳陣からも特別扱いの待遇を受けるようになっていったのか。後に展開する「頭取クーデター」が何故起こったのか。その背景と原因を語ることにしたい。

 山上は谷本と運命的な出会いにより維新銀行の新入行員名簿を手にした1965年(昭和40年)から、営業成績は飛躍的に伸び、第五生命東南営業部ではトップの外務員となっていた。
 特に谷本が営業本部長を務めた2年間、西部県内の維新銀行取引先の保険勧誘の紹介を受けて、第五生命全社のトップクラスの外務員となった山上の報酬額は、年間1億円を超えるほどであった。この報酬を得る地位に昇り詰めることができたのは谷本との強い絆のお陰であった。
 そのため山上は、谷本の私的な飲み代などの交際費や小遣いまで面倒をみるようになった。元々この金は紹介手数料であり、本来銀行の役務収益に帰属するものであったが、山上はプールした紹介手数料をバックする形で還元し、谷本への支援を惜しまなかった。谷本もこの山上の支援を心から感謝し、将来必ずその支援に報いることを堅く心に決めていった。
 この山上の献身的な支援は後に谷本が頭取の座を射止める原動力になっただけではなく、谷本が頭取に就任すると維新銀行の人事に介入する原動力へと変わっていくことになる。
 山上の名刺は、

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 となっており、MDRTのロゴマークが印刷されている。一般の保険外務員とは違い、第五生命保険相互会社本社の業務推進部の外務調査役の肩書きは特別待遇であった。
 『世界MDRT会員』とは"MILLION  DALLOR ROUND TABLE"の略で、ホームページによると「MDRTとは、生命保険と金融サービスの プロフェッショナルとして、世界中から認識されている国際的な独立組織です。 厳しい 入会基準を満たして承認された者だけに、会員の資格が与えられ、世界78の国と地域、約36,000名の会員を有し、日本会会員は3,153名(2011年度)」 となっている。 

 しかし、その当時のMDRT日本会会員はごく少数であり、山上がその当時から会員であったことは第五生命のトップクラスの外務員であったことを裏付けるものであった。谷本の支援を受け、維新銀行の取引先の保険勧誘により、その報酬はずば抜けたものであった。それは山上と谷本、そして谷本が育てた組合幹部達との三位一体よる協力の成果であった。

(つづく)
【北山 譲】

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「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」


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