<条件が厳しい補償>
モバイルオークションでは、詐欺被害に対して、補償を行なっているが、被害者が補償をもらうまでの道のりはかなり厳しい。運営会社は、補償を極力、払わなくてもいいように、いくつもの予防線を張っている。内容証明郵便発送→警察への被害届→補償申請の手順を踏まなければならず、申請するだけでもかなりの時間を要する。
さらに、補償申請が受理される基準も厳しい。まず、「個数が違う」ことに対して、補償は行なわない。これは、たとえば、ある商品を5つ出品した出品者が、1つしか送らずに落札者にお金を振り込ませ、そのまま落札者からの問い合わせや苦情を無視し続ければ、オークションの運営側としては、「それはそれでOKです」と言っているようなものである。これは怖い。商品を5つ買ったのに、1つしか届かなくても、当事者同士で解決しなければならない。モバオクにおける補償は、機能としてあるにはあるが、実質的にはほとんど機能しない。
上野さんのようなケースでは、掲載されていた商品とは別物であったが、商品を受け取ったため、対象外となってしまう。
<拡大する市場>
顔が見えない取引であるインターネットオークション。実際に「何が届いたのか」「届かなかったのか」あるいは、「出品の写真に掲載されていた商品とは、別物だったのか」など、運営側は、その詳細を把握することができない。
国民生活センターに寄せられたケースでは、Y社のオークションで落札したチケットが偽造されたもので、落札者は、運営会社に補償を請求したが、対象外で補償を受けられなかったケースが報告されている。たとえば、オークションページの写真に本物として掲載されたブランド商品が偽物であっても、補償対象外となる。
インターネット上で買い物を行なうBtoCのEC(消費者向け電子商取引)市場は、野村総研の調べによると、2014年までに約12兆円規模に成長すると言われている。一般人同士が、お金と商品をやり取りするCtoCのオークションの市場も今後、拡大していくだろう。消費者庁は、コンプガチャを規制に持っていった手腕はすばやかったが、運営会社によるオークションの補償規定の変更、改善にも働きかけるべきではないだろうか。運営会社も、市場の拡大にともない、補償内容などを時代に見合ったものに改善していくべきではないだろうか。
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