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経済小説

「維新銀行」~第一部 夜明け前(49)
経済小説
2012年6月 1日 14:00

<第五章 谷本次期頭取誕生の軌跡>

協力者たちとの絆(5)
 
bi_4.jpg 1950 年代後半から日本経済は高度経済成長期に入っていった。そのため経済成長にともなう物価および賃金の急激な上昇により、賃金を基礎として算定される退職一時金の支給額もまた年々増加することが見込まれ、企業の資金繰りへの影響が懸念され始めるようになった。

 その上56年(昭和31年)の税制改正において、退職給与引当金制度で損金計上が認められる累積引当限度額が、要支給額の2分の1に引下げられるなど、税制優遇の度合いが引下げられ企業にとって大きな負担となっていた。
 そのような状況を背景として、退職一時金の支払負担を平準化することが、企業経営上の課題として大きくクローズアップされ、その対策の一つとして、税制上の優遇措置をともなった企業年金制度の導入が検討されることになり、57年(昭和32年)年8月に、当時の日経連が「企業年金の課税政策に関する要望」を提出したのを皮切りに、日経連、信託業界および生命保険業界が中心となって関係当局に働きかけた結果、62年(昭和37年)の法人税法および所得税法の一部改正により、適格退職年金(適年)制度が創設され、同年4月1日より施行された。

 維新銀行でも毎年100名近い行員を採用する状況になり、適年制度の採用を谷本総務部次長が中心となって検討を始めていた。制度創設時は法人税法施行規則において7項目が定められていたが、正代が谷本の紹介で新入行員の生命保険を獲得した年、65年(昭和40年)年の改正で根拠規定が法人税法施行令第159 条となり、適格要件は11項目と強化されていく方向にあった。

 そのため維新銀行も年々増加する新入行員の採用にともない、増加する退職一時金の平準化を急ぐ必要が出て来たため、国税庁の承認を受けて適年制度を導入する準備がスタートした。
 主幹事の保険会社は、百六十銀行時代から主要株主であった三星財閥系列の明和生命とすることが決まった。他に御堂銀行の紹介により維新銀行の大株主となっていた大日生命と、旧財閥系で戦前からの株主であった友田生命の二社が決まったが、谷本総務部次長の「もう一社入れた方が保全上良いのでは」との提案を受けて、もう一社を加えることになった。但し、維新銀行の株式を安定的に保有することと、内容の良い保険会社が選定の条件となった。

(つづく)
【北山 譲】

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「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」


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