<関電は破産寸前?>
夏場のピークは「平日・日中・午後1時から4時にかけて」だけ発生する。そのピーク時の消費は家庭の消費ではない。家庭は平日日中のその時間、3分の2が不在だからだ。
にも関わらず推定1割しか消費しない家庭を計画停電させるのは、いかにも偽装くさい。世論調査によれば脱原発を求める声は8割に上るが、一方で停電よりは原発再稼動を望む声もまた半分を占める。ということは、停電で脅せば人々は原発容認派になるだろう。
これが偽装計画停電が行なわれる背景だ。関電が「電力需要の問題ではない」と言いながら大飯原発を再稼働しようとするのは、このまま廃炉になることを恐れるためだ。関電の総資産1.5兆円のうち、原発関連が8,900億円を占める。それが廃炉となると、原発は「資産」から「負債」に変わる。残りの資産額6400億円も、毎年約2,400億円の赤字経営なのだから、あと3年弱で経営破綻だ。本当の原発の発電コストが高いことは、「原発のコスト(大島堅一著/岩波新書)」で立証済みだ。(図3)原発が重荷となって破綻寸前になっているのだ。
<再稼働の安全は「神頼み」>
足りないと言われる今夏の電力供給だが、他の研究機関は不足しないとしている。その差は「他の電力会社からの融通電力」分と、「揚水発電所の能力の半分しか稼働させない」ためだ。
他社から融通を受ければ高くつく。揚水発電はそもそも需要の少ない夜になっても弱火にできない原子力発電の欠点のために造られたものだ。原発の動いていない今、揚水発電を使うためには前夜に火力発電の電気で水を貯めるか、他社から前夜に高い電気を買って賄うかしかない。どちらも関電にとってカネがかかるのだ。だから原発を動かしたいのだ。
しかし関電の経営リスクのために、危険な原発を再稼動するのは本末転倒だ。地震が起これば免震棟もなく、原発より先にオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)が津波に呑まれる状態なのに、動かすのはただの「神頼み」だ。原発は止めていても費用がかかるし、使えば使うほど最終処理の費用がかさむ。今、見切りをつけるのが合理的な判断なのだ。
※図4は電気事業連合会 電力需要実績より作成
<プロフィール>
田中 優 (たなか ゆう)
1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院、横浜市立大学の 非常勤講師。『シリーズいますぐ考えよう!未来につなぐ資源・環境・エネルギー①~③』(岩崎書店)、『原発に頼らない社会へ』( 武田ランダムハウス)など、著書多数。
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