<医師の眼から見た「健康」>
――新庄先生は北九州市若松区で整形外科医院を経営するかたわら、スポーツドクターとして九州共立大学スポーツ学部で教鞭をとっておられるそうですね。まちのコンセプトである「健康」や「癒し」は、スポーツドクターの目には、どのように映っていますか。
新庄 これからの高齢化社会における非常に重要なテーマを、まちのコンセプトに据えていると思います。皆さんは、近年注目が集まっている「ロコモティブシンドローム(運動器症候群:以下、ロコモ)」という言葉をご存知でしょうか。テレビでも取り上げられようになったこの言葉は、「運動器の障害によって要介護になるリスクの高い状態」を意味しています。運動器は、広く人間の活動の根幹ですが、その運動器の健康のためには医学的評価と対策が重要だとの認識が高まりつつあります。まちを挙げてこの点への意識を高めようとする「くりえいと3丁目」の取り組みには、医師として大きな共感を覚えています。
――寝たきりや要介護は、誰しも避けたいものです。医学的な観点からのロコモの評価と対策とはどのようなものですか。
新庄 運動器の障害であるロコモの原因は、大きく2つに分けられます。1つは加齢によって筋骨格運動器系そのものに疾患をきたす運動器自体の疾患、もう1つは加齢によって身体機能が衰える運動器機能不全です。また、ロコモは認知症やメタボと並んで、健康寿命の短縮につながる3大要因の1つですし、これらを併発する方もいらっしゃいます。そのため総合的な対策が必要とされ、私はスポーツと医療を結びつけた「メディカルフィットネス」がロコモ対策に有効だと考えています。
――先生は、すでに「メディカルフィットネス」の理念を具体化させたスポーツ施設を運営されているとか。
新庄 スポーツと医療の融合自体は、従来から提唱されてきた理想形でした。ただ、施設の規模や人材面での問題、さらには法律上の問題もあって、これを本格的に実現できた施設は皆無でした。私たちが運営する「快適倶楽部リフレ」(北九州市若松区)では、スポーツクラブに併設する医院と連携して、医療行為(医師だけに許された行為)を含んだスポーツプログラムを提供できるのが特色です。開設して6年になりますが、厚生労働省から指定療法運動施設の認定を得ており、年配の方を中心に1,200名の会員さまからご支持いただいております。
<プロフィール>
谷井 博美(たにい ひろみ)
宗像市長
1940年5月生まれ
熊本大学法文学部卒業後、1963年に福岡県庁に入庁。福岡県企画振興部長などを経て、1999年に空港周辺整備機構福岡空港事業本部理事に就任。2001年に宗像市副市長(当時、助役)に転じ、2006年に宗像市長に就任。2010年に再選を果たし、現在2期目。
<プロフィール>
中冨 清太(なかとみ きよた)
日創開発(株)・(株)くりえいと代表取締役
1942年1月生まれ
日創開発において、建設業および不動産開発事業に携わる。2000年に完成させた大型複合商業施設「くりえいと宗像」(くりえいと1丁目・2丁目)を成功に導き、11年秋には第二次開発となる「くりえいと3丁目」を完成させた。「くりえいと宗像」の年間集客数は1,000万人を超え、施設およびJR赤間駅周辺では各マンション業者の開発ラッシュが起こるなど、赤間地区活性化の立役者的な存在として知られる。
<プロフィール>
新庄 信英(しんじょう のぶひで)
1956年7月生まれ
医学博士、新庄整形外科医院長、(株)メディカルスポーツライフ研究所代表取締役
山口大学医学部大学院を卒業後、山口大学付属病院、済生会下関総合病院勤務を経て、新庄整形外科医院を開業。05年には「医療とスポーツの融合と調和」を掲げたスポーツクラブ・「快適倶楽部リフレ」を開業した。スポーツドクターとしても知られ、九州共立大学スポーツ学部では客員教授として教鞭を握る。
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